公の場で
作・富士


7月の上旬、気温は30度を超えていた。
本格的な夏の到来を予感させる。
道を歩く人々は汗をだらだらと流しながら歩いていた。

普段大勢の人々でにぎわう場所が今、辺りはシーンと静まり返っていた。
「静寂」、そんな言葉がぴったりと当てはまるその場所で、1人の少女が立っている。
何の音も聞こえない中、少女の呼吸音だけが妖しく響いていた。

少女はまったく動こうとしなかった。
自分がこれからすることになる行為に戸惑っていた。
しかし、そのこれからする行為に対してある種の興奮も感じていた。
異性どころか同性の女の子たちに対してもほとんど見せたことのない自分のあられもない姿。
それをいつ人が来るかもしれない場所で露わにする行為。
初めての経験。戸惑うのは仕方なかった。
だが、それをしなければいけないことも少女には分かっていた。
その行為をしなければ何も始まらない。

少女は覚悟を決めて、着ている制服の青いスカーフに手をかけた。
セーラー服にこすれる音が聞こえる。
(恥ずかしい)
普段家では何も考えずやっている行為にも恥ずかしさが付きまとう。
スカーフを取り、辺りを見回す。辺りに人がいないことを確認し、上着に手をかける。
両腕を交差させ、上着の一番下の部分を掴んで、一瞬手が止まる。
上着を脱いでしまったら後戻りできない。そんな考えが手を止めた。
でも、それをやらなければならないことも分かっている。
諦めにも似た感情を抱いて、少女は上着を掴んでいる両手を一気に上に引き上げた。
上着が上に引き上げられるのに合わせて、ヘソ、腰のライン、
最近お気に入りの白いブラジャーが外の空気に触れる。

少女は後戻りできないことを改めて感じていた。
上半身はブラジャー、下半身は紺色のスカートに真っ白のソックスと靴。
中途半端な自分の格好を見て恥ずかしさがこみ上げる。
その恥ずかしさから少しでも早く逃れようと、少女はスカートに手をかけ一気に下ろした。
今度はブラジャーに合わせて買ったパンティーが外の空気に触れる。
下着姿のまま周囲の気配を探る。今のところ誰もいない。
少女は少し安心してホッと一息つく。
しかし、誰がくるか分からない今の状況でいつまでものんびりはしていられない。
少女はブラジャーのホックを外すため、両手を背中に近づけた。
パチッ。ホックが外れる音がして、ブラジャーが胸から離れる。
発展途上の小さな胸、そしてその先のかわいらしいポッチが露わになる。
少女は再び周囲の状況を確認して誰もいないことが分かると、白いパンティーに手を持って行く。
前屈みになってそれを軽く下げると、ストンっと足首まで落下した。
まだ生えそろわないアンダーヘアーが少女の目に飛び込んでくる。
少女の顔が一瞬にして紅く染まった。

ここまでで時間にして5分。
(早くしないと怒られる)
少女は焦り始めていた。慌ててソックスと靴を脱いだ。
生まれたままの少女の姿がそこにはあった。
慌てていたため周囲への警戒を怠っていた。

「何やってんの、アンタ!」
そこには紺色のスクール水着に身を包んだ女の子が立っていた。
「こんなところで着替えて。プールの横に更衣室あるでしょ」
「うん、そうなんだけど・・・女同士とはいえ人前で着替えるのが恥ずかしくて・・・」
「いくら女子校だからって教室で着替える方が恥ずかしいと思うよ」
「・・・・・・・」
女の子の言葉に少女はうつむいてしまう。
「まぁいいわ。とにかく早く着替えた方がいいよ、体育の高橋先生遅刻にうるさいから。
私忘れ物取りに来ただけだからもう行くね」
「うん」
少女の返事を聞くと、女の子は自分の机から忘れ物を取り教室を出て行った。
少女は同級生の女の子と会話しているときの自分の姿を思い浮かべ赤面しながらも、
机の上に置いてあるスクール水着を手に取ると素早く着る。

スクール水着に着替えた少女は先ほどの女の子の後を追うように教室を出て行った。

−完−


あとがき
お題に合ってます? ちょっと、いやかなり自信ないんですけど・・・
こういう文章って、書いてる自分に恥ずかしくなるので苦手なんですよね。
それでも一生懸命書いたので、たくさんの方に読んでもらえれば嬉しいです。