漫才師“富士山”vol.2
作・富士


男「さあ、今夜から始まりました新番組『勝ち抜きお笑い合戦』 司会は私、菅原明と・・・」
女「私、テレビ夕日新人アナウンサー加藤玉緒です。よろしくおねがいします♪」
菅原「生放送でお送りする第1回目の今夜。まずは番組の説明をいたしましょう。加藤さんお願いします」
加藤「はい♪ この番組では、毎週将来有望な若手漫才師4組に登場していただき漫才を披露してもらいます。そして漫才の終了後、客席の100名のみなさんに漫才が面白かったと思ったら投票ボタンを押していただき、その点数が50点以上でトップだった1組が勝ち抜き、翌週にまた4組のうちの1組として登場。見事10週連続勝ち抜きで・・・なんと、いきなりゴールデンタイムの冠番組を持てるという、若手のみなさんにとってすごい魅力的なシステムになっています」
菅原「10週連続でトップを取ればいきなり冠番組ですかぁ、すごいですね〜 私なんて今の地位を築くのに何十年かかったことか・・・ぶつぶつ」
加藤「生放送中に愚痴らないでくださ〜い。まだ説明の途中なんですからぁ」
菅原「あ・・・そうなの? では、続きをどうぞ」
加藤「それぞれに漫才を披露していただくわけですが、客席のみなさんのお手元のボタンには、面白かったときの投票ボタンの他に『不満ボタン』というのも付いています。これは、漫才の最中に面白くないな〜と感じたときに押していただくもので、この不満ポイントが30ポイントになるとそこで漫才は終了になります。簡単に言うと30人の方が面白くないと思ったときですね。もちろん最後の投票への参加資格も無くなります」
菅原「すごいね〜」
加藤「そうですね。結構厳しいルールですね〜」
菅原「よく噛まないで言えたね」
加藤「本番直前まで練習してましたから・・・って何言わせるんですかぁ」
菅原「台本通りのミニ漫才も終わったところで、さっそく栄えある1組目に登場していただきましょう」

加藤「今週の1組目は結成2ヶ月の超若手漫才師"富士山"です。目標の漫才師は爆笑問題さんだそうです」
菅原「では、はりきってまいりましょう。どうぞ〜」

山田「どうも〜」
富士田「よろしくおねがいします〜」

ブブ〜

菅原「もう不満ポイントが30超えちゃったみたいですね」
加藤「早いですね〜 挨拶しただけなのに・・・」
菅原「ビジュアルがまずかったんじゃないんですか〜(笑)」
加藤「たしかにイケ面って感じじゃないですけど・・・」
菅原「(・・・え? 故障しただけ?) 失礼しました。今のはどうやら機械が故障して間違って鳴ってしまっただけみたいです」
加藤「生放送ですからいろいろありますね(苦笑)」
加藤「では、富士山のお二人、改めてどうぞ」

山田「驚いたね〜。いきなり鳴るんだもん」
富士田「素で驚いちゃったよ」
山田「機械の故障で良かったよ」
富士田「自分だって大した顔じゃないのに、俺たちのこと"イケ面じゃない"なんて」
山田「そっちかよ!」
富士田「アナウンサーって最近可愛いのが採用されるって聞いてたのに」
山田「いい加減にしないと、あの子泣いちゃうから」
富士田「もう泣いてるけどな」
山田「え? あっホントだ・・・ おまえ後でちゃんと謝っておけよ」
富士田「この漫才が最後まで出来たらね」
山田「最後まで出来なくても謝れよ!」
富士田「もし最後まで漫才やれなくて、謝れなかったら客席のみなさんのせいです」
山田「客席をおどすな!」
富士田「気を取り直して漫才やろう。時間が無くなるから」
山田「おまえのせいだろうが」

山田「とりあえず・・・2回目のテレビ登場ってことで緊張してます。今朝から緊張で身体がカチンカチンです」
富士田「私も緊張でカチンカチンです。とくにココ(股間)なんて・・・」
山田「そこは関係ないだろっ」
富士田「普段マグナムなのに、今日はバズーカ砲」
山田「そりゃ言いすぎだろうが!」
富士田「"波動砲発射"」
山田「発射するな〜! それに若い人知らねぇよ」
富士田「『宇宙戦艦ヤマト』に出てくる・・・」
山田「いちいち説明しなくていい」
富士田「おまえが変なこと言うからまだ挨拶もしてねぇじゃん」
山田「俺は普通に緊張してるって言っただけだろっ。おまえが話を逸らしたんじゃねぇかよ」
富士田「とにかく挨拶! 人としての基本だろ」
山田「はいはい」
富士田「"はい"は1回でいいの」
山田「はい」
富士田「ついでに"はい"はカタカナでな」
山田「んなこたぁどうでもいいんだよ!」

富士田「初めてのみなさん、はじめまして」
山田「はじめまして〜」
富士田「2回目のみなさん、またお会いできてうれしいです」
山田「うれしいです」
富士田「3回目のみなさん、嘘つくんじゃねー」
山田「嘘つくんじゃねー・・・って変なこと言わすな。たしかに3回目のわけがないけど」
富士田「『嘘つきは泥棒のはじまり』って言うからな、注意しておかないと」
山田「別にたいした嘘じゃないんだからいいだろう」
富士田「そういうのがいけないんだよ!」
山田「あ〜もう、うっとおしい」
富士田「そんなわけで、富士田とこいつで"富士山"です。よろしく」
山田「俺の名前が"こいつ"かよ! 俺にだって山田という名字がちゃんとあるんだよ」
富士田「初めて知った」
山田「そんなわけねーだろっ」
富士田「ありがとうございました〜」
山田「って終わってどうする! まだ何もしてないだろうが! そりゃ終わる時みたいなツッコミはしたけど」
富士田「"そんなわけねーだろっ"って言われると、つい"ありがとうございましたー"って言いたくなっちゃうんだよ」
山田「おまえは『パブロフの犬』か!」

富士田「ところで、最近ニュースとか見てる?」
山田「ツッコミ無視かよ、いつものことだけど。・・・ニュースか? 人並みには見てると思うけど」
富士田「どんなニュースがある?」
山田「俺に聞くのかよ! おまえが話振るんじゃないんかい!」
富士田「テレビ見てる暇が無いから・・・最近ゲームウォッチが忙しくて」
山田「十分暇じゃねぇか! それにゲームウォッチっていつの時代だよ!」
富士田「なんでもいいから最近見たニュース教えてくれ」
山田「う〜ん、そうだなぁ・・・ この間、お隣の国の偉い人が来てたんだけど知ってる?」
富士田「それは知ってるよ。テレビ番組にも出てたな」
山田「おっ、知ってるんだ。筑紫哲也の番組に出てたね。多少はテレビ見てるじゃん」
富士田「前にテレビで見た印象は派手だったけど、中身は結構真面目なんでビックリしたよ」
山田「そうかぁ? 俺は正反対の印象受けたけどなぁ」
富士田「まさか韓国のあの有名な人が日本に来るなんてなぁ」
山田「そうだよな〜」
富士田「チョナン・カン」
山田「それは草薙だろっ、草薙剛! 純粋な日本人だよ!」
富士田「でも韓国語ペラペラだったぞ」
山田「それは勉強したからだろ! 韓国語しゃべれるヤツはみんな韓国人か!」
富士田「そこまでは言ってないよ、さすがに。パトリック・ハーランは日本語上手いけどアメリカ人だしな」
山田「例えがマニアックすぎるっつーの! パックンって言っても分かる人少ないだろうに」
富士田「マックンも日本語上手いよね」
山田「マックンは日本人だ!」
富士田「道理で日本語が上手いわけだ」
山田「顔もコテコテの日本人だろ!」
富士田「ネプチューンのMR.ナッグーラも日本語・・・」
山田「それも日本人!」
富士田「デーブ・スペクターは埼玉県人でナッグーラはタイ人だろ?」
山田「終いには怒られるぞ!」
富士田「話が逸れてる、逸れてる」
山田「おまえが逸らしたんだろうがっ!」
富士田「で、何だっけ?」
山田「え〜と、何だったっけなぁ?」
富士田「韓国の有名な人が来たって話」
山田「知ってるのに聞くなよ! そうそう、韓国から来たのは大統領だよ、韓国の大統領」
富士田「あ〜、ノムさんのことね」
山田「ノムさんって野村監督呼ぶみたいに言うな!」
富士田「間違ってはいないだろ?」
山田「間違ってないとは思うけど・・・でも・・・なんか違う気がするんだよなぁ・・・」
富士田「間違ってないならいいじゃん」
山田「・・・うん・・・でも・・・でも・・・」
富士田「泣くな」
山田「やっぱりどこか違くないか?」
富士田「まぁね。名字が"ノ"だから、正確には"ノさん"だな」
山田「知っててボケるな! 恥かいただろうが!」
富士田「知らないほうが悪い」
山田「・・・うぅ」
富士田「九州薩摩の人が言うと"ノど・・・」
山田「わ〜〜〜! それは時代的にマズイ!」
富士田「"ノどんが日本に来たらしいよ"なんて言うのかな?」
山田「知らねぇよ! せっかく俺が止めたのに言っちまいやがって! それに想像で適当なこと言うな!」
富士田「北朝鮮だけじゃなく、韓国からも・・・(ガクガク)」
山田「敵作るだけだからいい加減に止めろ! テレビの前のみなさん、ちょっとブラックすぎたかもしれません。ごめんなさい」
富士田「許さない・・・絶対に許さないんだからぁ!」
山田「なんでオカマキャラなんだよ! それにおまえには許してもらわなくて結構だよ!」
富士田「ちゃんと謝れよ、俺だって無駄に敵作りたくないから」
山田「おまえが不謹慎なこと言うからだろ!」
富士田「仕方ないなぁ、話を戻そう。まぁとりあえずだ。サッカーの日韓戦とか韓国の人たちは日本に対して敵意むき出しで来るけど・・・」
山田「そういうところ多少はあるね」
富士田「そこは『嫌い、嫌いも好きのうち』ってことで、今回の大統領の来日を期に韓国と日本が仲良くなれるといいよね」
山田「いいこと言うね〜」
富士田「日本と韓国、ある意味"幼馴染"なんだから」
山田「上手いね♪」

富士田「"幼馴染"といえば、やはり俺は『タッチ』を思い浮かべるね」
山田「まぁ王道だな」
富士田「上杉和也と・・・」
山田「上杉達也と」
富士田「"みなみ"春夫でございます」
山田「って、そりゃレッツゴー3匹のネタだろっ!」

ブブ〜

菅原「あ〜、残念・・・不満ポイントが30を越えてしまいました。今度は機械の故障ではないようですね。加藤さんは今の漫才どうでした?」
加藤「私、この人たち嫌いですぅ・・・プンプン!」
菅原「・・・・・・(珠緒ちゃん、珠緒ちゃん、素になってるよ)」

そんなわけで、漫才師"富士山"は最後まで残ることは出来なかった・・・

−完−


あとがき
山田「残念ながら最後まで漫才をやり遂げることは出来ませんでした(泣)」
富士田「これから面白くなってたかもしれないのに」
山田「ここだけの話、この後のネタまったく思いつかなかったらしいよ」
富士田「散々前振りしておいてこれかよ! "幼馴染"ほとんど出てないじゃん!」
山田「言ってやるな・・・(苦笑) これでも悩みながら書いたんだから」
富士田「才能無いなりにな」
山田「俺もあるとは思わないけど、言っちゃマズイだろ」
富士田「まぁ何だ、励ましのメールでも送ってやってくれ」
山田「ぜひお願いしたいね。あとはうちらが番組で投票してもらえなかった分、読み物倉庫で投票してもらえると嬉しいな」
富士田「1点でもいいから投票してやってくれ」
山田「1点はさすがに凹むだろうけど・・・とりあえずたくさんの方に投票してもらいたいね」

富士田「そんなわけで・・・」
山田「これからもストーリーが浮かばない時に現れるかもしれないんで・・・」
二人「よろしくお願いします♪」