ネクスト・ステップ 作・無差別 流 |
パン! 夏の青い空に乾いた音が突き抜ける。 パン!パン! 何の音だ? 意識をつかのま集中して、耳をすませる。 パン!パン!パン! ああ。 布団叩きか・・・。 いい天気だもんな。 オレの布団もそろそろ干さなきゃな・・・。 *** 「・・・んしょ」 額に浮かんだ汗を手の甲で拭うと、千恵はふぅ、とため息をついた。 ベランダに二人分の布団を出すのは、ちょっとした大仕事だ。 「やっぱり恵美に手伝ってもらえばよかった・・・」 ずいぶん朝早くから出かけていったので、声をかけそびれたのだけれど。 (どこか行くの?) (んん。友達のとこー。) (お昼はいらないの?) (うん。晩には戻るから。いってきまーす!) (あ・・・いってらっしゃい・・・) ベランダの手すりにもたれかかって、眼下に広がる公園を見下ろす。 かん高い子供たちの歓声は、アパート4階のここでも充分に響いてくる。 「いいなぁ」 誰に聞かせるというでもなく、千恵はつぶやいた。 夏休みに入ってから、恵美は毎日のように遊びに出かけていた。 私と違って社交的な性格の妹は、遊び友達にも事欠かないようだ。 それに比べて自分は、食事の買い物に出かける以外はほとんど 家にこもりっぱなしだ。 再び吹き出してきた額の汗が目に向けてつつーと流れてゆく。 銀縁の眼鏡をはずして、その汗を拭い、青い空をぼーっとながめてみる。 「今年は受験だし・・・しょうがないよね」 と言って自分をなぐさめる。 それが言い訳じみて聞こえることも承知だった。 おとなしくて引っ込み思案で、心を開いて付き合える友人もいない。 いきおい勉強に集中せざるを得なかった。 (優等生で、つきあいづらいタイプ) いつのまにか。 クラスの中のそういう立場に自分がなってしまったのは本意ではないけれど。 しょうがないことだとも思っている。 でも・・・。 「友達がいれば、わたしだって」 一日中部屋にこもってなんかいない。 恵美ほどおおらかに遊び回ることはないだろうけど。 「受験」、という言葉はそんな千恵の逡巡を打ち消す魔法の言葉。 「受験だから遊べない」 「受験だから一日中部屋にいる」 受験だから。 受験だから。 受験だから。 「きゃっ」 どこからか響いてきた子供の歓声が耳を打ち、 とりとめのない思考から千恵を現実に引き戻した。 「あっ、お布団・・・」 ベランダをパタパタと走って部屋にとってかえす。 布団たたきはどこだったかな? (それにしてもさっきの声) 目で布団たたきを探しながら、千恵の思考はふらふらとさまよう。 (恵美の声に似てたような・・・) 「まさか・・・ね」 見ためも言動も幼い妹だけど、公園で子供たちと遊んで喜ぶような歳でもない。 友達のところへ行くって言ってたし。 きっと気のせい、うん。 千恵は一人で納得すると、布団たたきを探すことに意識を集中した。 *** 「きゃっ!」 恵美の思いがけない悲鳴に、オレは手の力を抜いた。 「どうしたの?」 「だって・・・いきなりなんだもん・・・」 「そうでもないだろ?」 後ろから胸に回した手を再び動かす。 「んっ・・・んっ・・・」 今度は抵抗しない。 恵美の薄い胸を麻の半袖シャツの上から丁寧に揉みあげる。 目の前のTVでは、 夏休み特番・朝のアニメ番組が終わってCMが流れている。 アニメが終わるのを見計らって、 畳に座ってジュースをすすりながら見入っていた恵美の後ろに陣取ったのだが。 「待ちきれなかったんだろ?」 「ん・・・そんなことないよぉ・・・」 嘘だな。 アニメに見入ってるようなふりで、 その視線は所在なさげに宙をただよっていたのをオレは見逃していなかった。 恵美の後ろに陣取った時、気配に気づいた恵美の肩がピクンと震えたのも オレは見逃さなかった。 間違いない。 恵美はこの瞬間を心待ちにしていたのだ。 「それにしても・・・そろそろブラジャーつけたらどうだ?」 シャツの上から胸の先端をぽんぽんと叩きながら聞いてみる。 「んもう・・・このセクハラおやじぃ・・・」 と抗議しながら、上半身をもたれかけてくる恵美。 目をしっかりつむって、体をかけめぐる快感に耐えているようだ。 「そのセクハラおやじに弄られて喜んでいるエッチな子は誰かな?」 「そんな・・・違うよぉ・・・恵美は・・・」 シャツのボタンを上からはずしてゆく。 「そうかな・・・?」 恵美の上半身が夏の外気にさらされる。 確かにまだブラジャーは必要ないかも、と思わせる薄い肉付きの胸。 経験の少なさを物語る薄桃色の乳首。 が、その先端は。 「もうこんなに硬くしてるじゃないか」 人差し指と親指で恵美の乳首をくりくりと摘み上げ、弄ぶ。 「やぁっ・・・あ・・・んっんっ」 先端への刺激に、恵美は上半身を反らせて首を振る。 「いやぁ・・・ん・・・ダメなのぉ・・・そこぉ」 「ふむ・・・。じゃぁこれはどうかな?」 恵美の腰をつかんで立たせ、こちらを向かせる。 「こっちに座って」 あぐらを組んで座っている自分のひざをポンと叩く。 「うん・・・」 恵美は一瞬躊躇を見せたが、 素直にオレの膝にまたがる格好で腰を下ろした。 オレのあぐらの中央、何も無い部分に恵美の腰がすっぽりと収まる。 オレの太ももが恵美の両足を押し開くような形だ。 そうなると当然、恵美のジーンズ地のスカートが自然と捲くれあがって その下にある白い生地が顔を覗かせることになる。 「おやあ?」 視線を下に向けて、わざとらしく驚いてみせる。 「恵美ちゃんは・・・男の人にパンツを見せるのが好きなのかなぁ?」 「違うもん・・・そんなんじゃないもん・・・」 自分の今の状況を自覚して顔を赤らめながら、 恵美は必死で否定する。 「まぁ、いいけどね、どっちでも」 否定の言葉をあっさりと受け流すと、オレは指を白い生地の中央に伸ばす。 ぴと。 すでに湿り気を帯びていた恵美の中央が、柔らかくオレの指を受け入れる。 「はぁ・・・んんっ・・・」 恵美がしがみつくようにオレの頭を抱え込んだ。 はからずも目の前に飛び出してきた胸の先端をくわえ込む。 「だめぇ・・・だめだよおぉ・・・ああんっ」 声は拒絶しながら、その腰はなまめかしく揺れる。 (そろそろ頃合だな) 恵美から少し体を離すとジッパーを下ろし、 赤黒い肉棒を露出させる。 「んっ・・・」 天に向けてそびえたつ肉棒を見つめて、 恵美が息を呑んで黙り込む。 「さぁ、どうしたいのかな?」 「んー・・・」 「自分で好きなようにしてごらん・・・」 潤んだ瞳をこちらに向けてしばらく逡巡する恵美。 やがて意を決すると、腰を浮かせ、 手を自らの股間にあてる。 白い布に指を引っ掛け横にずらし、 赤く火照った性器を露出させた。 「もうぐちょぐちょだね、恵美」 言葉に反応して、 恵美の性器からぴゅっと飛沫が放たれる。 「いやぁん・・・言わないでぇ・・・」 恵美はかぶりを振りながらも腰を肉棒の上に移動させて、 「んんっ!」 と腰を下ろした・・・。 *** 「んもう。やだー」 布団叩きは探すまでもない場所、 ベランダの洗濯機に立てかけてあった。 「灯台下暗しよね・・・」 気を取り直してベランダの手すりに乗り出し、 いざ布団を叩こうとした刹那、 千恵は耳に届いてきた音に意識を奪われた。 (んっ・・・んっ・・・ああっ) (や・・・あんっ・・・はあっ) 各部屋のベランダは防火壁で視界はさえぎられている。 が、それが隣の部屋からのものであることは疑いようがない。 カーッと耳まで赤くなる千恵。 さすがに経験はないものの、 その声が男女の営みの声であることは千恵にもわかる。 「先生・・・?」 千恵と恵美姉妹が越してきた部屋の隣は、 塾の講師をしているという若い男だった。 (受験のことも詳しそうだし・・・) 一回ちゃんとお話してみたいなぁ、と思っていたけれど。 (やっぱり・・・大人の男の人って・・・そうよね) 自分とは無縁の世界。 男女の営み。 小さな疎外感と、怖れと・・・。 自分もいつかその世界に入っていくのだろうか? ふと気がつくと、隣からの嬌声は止んでいた。 千恵はふるふると首を振って、布団たたきを振り上げる。 パンッ!! *** 「ふぅぅ・・・」 3回戦のフィニッシュ、 ベッドにぐったりと横たわる恵美の背中に精液をふりかけながら、 オレは長いため息をついた。 (まったく・・・底なしだなこの娘は・・・) オレだってまだまだ若いという自負はある。 しかし、この娘が覚えたてのセックスを貪る様には、 さすがについていくのが精一杯だ。 (まったく誰のせいだか・・・) だらしなく大の字になって肩で息をしている恵美を見下ろして、 また深くため息をついた。 (オレのせい、だよなぁ・・・やっぱり) 苦笑いをかみ殺す。 しかし、そろそろ次の段階にいくべきだろう。 守備範囲が広いことは自覚しているが、 さすがにいつまでも青い果実ばかりでは飽きがくる。 もうちょっと熟れた果実も食してみたい頃合だ。 パンッ! ん? 何の音だ? 意識をつかのま集中して、耳をすませる。 パン!パン!パン! 「あ・・・おねえちゃんだ・・・」 恵美がまだぼんやりした意識のままでつぶやく。 ああ。 布団叩きか・・・。 いい天気だもんな。 オレの布団もそろそろ干さなきゃな・・・。 それに。 これはいい機会だ。 「おい、恵美。布団干すぞ!」 「ええっ?・・・あとにしようよー」 「ぐずぐず言わない!さぁどいたどいた・・・」 むずがる恵美をベッドから追い出す。 ベランダへのガラス戸をガラガラと明ける。 「おにいちゃん、裸・・・」 とがめるような恵美の声が後ろから。 「誰も見やしないさ。アパートの4階なんだから。」 それに・・・と言葉を飲み込む。 裸のほうがいいのさ。 「出会い」は何事も最初が肝心なのだから。 「お前もこっちへ来い・・・」 え?という顔をする恵美。 大きな声を出すと隣のベランダの恵美に聞こえてしまう。 口の形でだけで恵美は抗議した。 (いいから。こっちに来い。服は着るな) オレもまた声をしのばせる。 が、表情は有無を言わせぬ強いものに。 従うしか、ない。 そういうしつけは、もう完了しているのだから。 しばらく躊躇していた恵美も、 あきらめて裸のままこちらに寄ってくる。 その手を取って、ベランダへの一歩を踏み出す。 これからが、本番なのだ。 (完) |
あとがき |
なにか一言・・・ですね。 アイデアに筆力と気力と時間が追いつきませんでした。 (主に気力) 後半は明らかに推敲不足です・・・。 身の丈にあったアイデアにしないとなあ、と自戒です。 |