作・らぴ夫   絵・ゆーすけ


くるみ「お兄ちゃん〜ほら〜アワアワいっぱいだよ〜」

   鼻の先に泡をちょこんとつけて、お風呂の中で喜ぶくるみ。
   洗ったばかりの髪にも白い泡がついている。

俺  「ほんとだ…結構でるんだね〜、…っておいこら暴れるなよ
   くるみ。泡が減るだろ。俺にも泡風呂を体験させろって」

   普段から元気いっぱいのくるみに、初めての泡風呂体験とくれば
   はしゃぐな、と言うほう無理がある。
  
   バシャバシャと泡だらけの湯船を掻き回すせいか泡が減ってきてる。
   俺は急いでシャンプーを洗い流すと、強引に中に割ってはいる。

くるみ「ぅわっ」

   水がザバ〜流れ出て、せっかくの泡までお供にしていく。

くるみ「おっ、お兄ちゃんっっアワっ泡が。」

俺  「ああ〜俺の泡生活が……水のアワ」

   肝心の泡が流れてしまい、うちの風呂は単なる風呂へと逆
   戻り…

くるみ「あ…、泡ついてるよココ」

   少しガッカリ気味のくるみがそういって耳タブを触る。

俺  「はぁ………」

   うなだれる俺、

くるみ「元気だしてよ〜お兄ちゃん、またやればいいよ♪
    ねっ♪」

   俺の胸に体を預け、不意に下からほっぺにチュ。
   ……かなり元気になった。


   仲良くお風呂に入っているこの娘は、お隣のくるみちゃん。
   少し年の離れたお姉さんと二人暮しで、夜のお仕事で留守にするお姉さんに、
   頼まれて仕事から帰ってくるまでの間預かっている。

   あまり人見知りしない元気な娘で、歳相応かそれよりも少し子供っぽい。
   体の方も少し胸にふくらみが出てきた程度でまだまだ成長中だが、
   それはそれで俺は大好きだ。
  くるみが引っ越してきた日、俺は付き合っていた彼女に別れを告げた。
   泡のように、すぐにでも消えてしまいそうな薄っぺらな間柄だったが、
   それでも、別れてみるとなにか心がぽっかりと空いたような
   寂しい気持ちで一杯になり、午後の授業は切り上げて家路を急いだ。

   いつものように、アパートの駐輪場に留めようとして、トラックが入り口
   を邪魔しているのに気づく。

俺 (ちっ、なんで人が調子悪いこんな時に限って、入り口ふさがってんだよ)

   俺はますます不機嫌になりながら、無理すればまたげる低い生垣を
   自転車を抱えて乗り越えようとした。

   ところが、運動不足なのか、運動能力がないのか、あっと思ったときは
   倒れ込んで地面に膝をつく俺。
   (いたた…やっぱついてないかも…)

   膝にじんわりと生暖かい感触が広がっていく。
   見ると、ジーパンがに血に染まりしみになっている。
   (このジーパン大切にしてたのにな…)
   怪我のことよりもジーパンの事、それからどうやって血抜きするか
   を考えていると――
   

声  「あっ血が出てる。お姉ちゃんっ、怪我してる人がいる〜〜。早く来てきてっっ」

   見上げると、白に可愛いプリントがついたTシャツを着た女の子が
   眉間にしわを寄せながら、うわっ、痛そう。といった感じで俺を
   見ている。結構、いやかなり可愛い。

俺  「大丈夫、思ったよりは痛くない」

   あんまり心配させるのは、こっちも落ち着かないので、少し無理して
   立ち上がろうとしたが…ダメだ片足に力が入らない。
   えっ…もしかして重症?? 

   倒れ込みそうになる俺をとっさに、その娘が支えた。

女の子「もぉ〜、大丈夫じゃないです。…って重いっっっお姉ちゃん早く」

   どうみても小学生の彼女に俺の体重は重すぎた。
支える体がプルプルと震え、顔もみるみる赤みがかっていく。
   こらえきれないっ。

   そんなピンチのさなか、不謹慎な話だが、俺は今の状況がどうでも
   よくなっていた。一目惚れってやつである。
   痛みよりも、肩越しに伝わる体温と、感触のことで一杯だった。


   結局、一緒に倒れ込んで一言。

俺  「あの…名前は?」

女の子「水上くるみです。今度引っ越してきました」

   今日は意外と悪い日じゃないかもしれない…。


****


お姉ちゃん「それじゃよろしくお願いします。くるみ、お兄ちゃんの言うこと聞いて
     大人しくしてなきゃダメよ。」

    いつもの事だが、申し訳なさそうに会釈してから、
    かなえさんがお仕事に出かけた。

    5分後。

くるみ 「いつもゴメンねお兄ちゃん。迷惑じゃなかった?」

    呼び鈴を鳴らし、今日のご飯を抱えたくるみが入ってきた。

俺  「部屋の電気ちゃんと消したか??」

くるみ 「うん、ちゃんと消してきたよ」

俺   「よしエライエライ。とりあえず、ご飯そこ。」

    テーブルを指さす。くるみがご飯を置く。その背後から――

俺  「くるみぃぃぃ〜好きだぁぁ〜」

    おもいっきり抱きしめる。手のひらから伝わる乳の膨らみは
    相変わらず「ちょいプニュ」レベル。

くるみ「えへへ…恥ずかしいよ〜もう」

    後ろから抱きしめられて、ちょっと驚いたようだけど、
    イヤではないようで、逆にもたれかかってくる。

くるみ「ねえねえ、もう一回、キュっとして」

    それじゃ今度は、正面から。
    立ったままだと、胸のあたりにおでこが来てしまうくらい
    の差があるので、座って抱きしめる。

くるみ「………」

    お姉ちゃんがいないと、やっぱりどこか寂しいらしい、
    一人になるとすっかり甘えっ娘になる。


    お互い一通り甘えあった後、ご飯を食べて、一緒にテレビを見る。

俺  「うぉっ…ありゃ死んだな多分」
くるみ「えっあれってやっぱり死んじゃってるの??」

俺  「ほらほら。生きてたら、最後にナレーションで、「彼はなんとか九死に一生を得た」とか
     言ってるやん。何も言わないで終わるのはやっば死んでるって」

くるみ 「ふーん、ホントに衝撃映像スペシャルだけあるね〜」

俺  「まあね」

   そんなこんなでいよいよ……いよいよお風呂タイムだっ。

俺  「そろそろお風呂はいろっか♪」

   見ていたテレビが終わるのを見計らって爽やかに声をかける。

くるみ「うん♪」

   元気に応えるくるみ。微妙にお子様で良かった〜と思う瞬間だ。
   一緒にお風呂に入るのに対して羞恥心があまりない。
   昔から家族みんなで入ってた…という話をくるみから聞いたが、
   今も一緒に入ってくれるのは嬉しい。 

   ちょい嫌がるのを無視して、衣服を脱がすと、スベスベの肌が露になる。
   正面からだっこして、お風呂まで運ぼうとすると、くみるも足を絡めて落ちないよう
   に掴まっている。肌の密着感がちょっとした欲情を掻き立てる。

くるみ「うにぃ〜なんか組み体操みたい」

俺 「ほら〜しっかり掴まってないと落ちるよ〜」
   わざと体を揺さぶると、くみるは素直に反応して、もっとしっかりと掴まる。

俺 「よ〜し。到着〜」

  既に、湯船にはブクブクと泡が立ち込め準備万端。
  以前失敗した泡風呂だ。

  今回は、前回の失敗を踏まえ、お湯は二人で入っても溢れでない程度に調整、ミントの香りが
  広がり心地よい。

  少しセクハラ気味にくるみの体を洗い、ついにリベンジの時がきたっっっ。

  くるみが先に入り、相変わらずはじゃいでいる。

  俺はおもむろに足を振り上げ、湯舟に入ろうとした。っっっとその瞬間。

  「カチャ」玄関のドアが開く音がする。マズイぃぃぃ誰かきた。

声 「くるみ〜。くるみただ今〜。どこいるの〜??」

  ヤバイ、お姉さんが帰ってきた。なんでいつもより2時間も早いんだ。
  逃れられないこの状況――走馬灯のように、くるみとのラブラブな日々が蘇る。

俺 (うがぁっっ、このままじゃ今までのラブラブが水の泡っ。こんなことなら…こんなことなら
   くるみに何かしとけば良かった〜、大事にし過ぎて触ってただけなんだよぉ〜ん、よぉ〜ん)
  愛。そして後悔。思考が混乱した頭の中で響き渡る。

くるみ 「あっお姉ちゃんだ〜、お帰り〜、くみるここだよっ〜」

俺 (くるみぃぃ〜、このミッション・インポッシッブルな状況でさえ、混乱した頭の中なんとか言い訳
   考えてるのに、ヒロインが止め刺すなよっっっ)

お姉ちゃん「あっここにいたんだ…って……あら雅彦君」

お姉ちゃん「…………」

くるみ「??………」

俺 「………ハハ」

  3者色んな意味で沈黙の中、ついに俺から切り出した。

俺 「あっお姉さん…おっ、お帰りなさい♪」

   語尾があがりつつも、言い切った。くるみが続く。

くるみ「おっ姉ちゃん、お帰り〜ほらほら、アワアワ〜」

  どこまでも無邪気なくるみ。しかし、かなえさんの次の言葉は多分怒りに満ち溢れているだろう。
  ああっ楽しい生活も全て水泡に帰す。

****

  ところがっっ、次に続いた言葉は、俺を仰天させるものだった。

かなえ「二人とも楽しそうね♪ ねぇお姉ちゃんも入っていいかな?」


  ……もしかして、「濡れ手に粟」ってやつでしょうか?

  以上お後がよろしいようで。

  おしまい



あとがき
 書き終わって、なんちゅう安直なストーリーやねん。
 と少しこっ恥ずかしくなりました。多分書いた人は大物を除いて
 みんな似たような気持ちでしょうか。初めてのオリジナルで、すき放題
 楽しく書かせてもらいました。 次回は、妹もの、今度は本来の欲望に任せて
 エッチ全開といきますか。  ではでは次回もよろしくお願いします。