DIA 作・漏電 |
概略
リズガミア大陸記 マノベール=スフィーダ著 【聖主大戦】 983年、旧大戦来100年以上続いた平穏な大陸が聖主同盟という同盟により脅かされた。 ハイランド帝国を筆頭としガー・ザ・アラーム、ミルンハイム王国、ヤーノウッド兵団、マヌワリ王国が 結んだ同盟である。 50か条に及ぶ大規模な同盟規約において、その主たる対象はリングレイド公国に向けられていた。 ヨーン教の違理解が、聖主同盟の基幹であった。 リングレイドはヨーン教を全く別のモノとして捉えて崇めているというのだ。 勿論、そのような宗教理念の相違が真実ではないし、真意でもない。リングレイドはすぐさまその同盟に反論した。 「我々は建国以来、ヨーン正教を名乗っている。その間、他国との宗教についての相違などなかった。 その同盟は不当である」 しかし盟主のハイランド帝国皇帝シェザ=ブレイドはすぐさま公式文書を出し 「ならば、今こそがその相違である」と切り捨てた。 これは、リングレイドが967年に発見、970年に正式に結ばれたジャタンの交易が原因である事は明らかであった。 ガー・ザ・アラーム、ヤーノウッド兵団はジャタンとの交易で列強のパワー・バランスが崩れるのを恐れて。 そしてハイランド帝国は領土を拡大する意図だった。 同盟国は、すぐさまリングレイドに侵攻した。 まずはハイランド帝国軍により軍事重要拠点であるトーノフス山脈が奪われた。 さらにヤーノウッド兵団とガー・ザ・アラームの連合軍は、オベリスク地域を8割方奪う事に成功した (オベリスクの戦い)。 この戦いで、何とヤーノウッド兵団の副団長ボウル=ボー率いる15人編成の烈火部隊は、 100人余りのリングレイド小隊を壊滅させたという。 さらに続いたオービロドの奪取のおいて、ヤーノウッド兵団は死者数0という、 前代未聞の圧勝を飾る事に成功した。 このような戦果は前述した烈火部隊の驚異的な攻撃力もあろうが、何よりもボウル・ボーの戦術、 武勇の賜物であったと言える。 しかしこのような戦果は、戦闘としての兵質が戦争にどのように影響するかの小さな一端ととらえられただけで、 戦争の新たな側面に気付く人間はごく僅かであった。 しかし、その僅かな人間の中に、リングレイド公国の軍師アーウィン=シュレイカーがいた。アーウィン=シュレイカーはリングレイド公国の若き軍師で、将軍の地位を得ていた。彼はボウル・ボーがもたらした将の影響力に目をつけ、当時リングレイド国内に駐在していた有名な傭兵団赤竜団の頭目、ディル=ファウストに助力を求めた。その時、ディル=ファウストは傭兵団の限界を感じていたところで、そのような話は渡りに船であった。すぐさまディルはそれに応じ、臨時司令官としてリングレイド公国に加入した。 リングレイドは猛将ディルが加入したことにより戦力が増大した。 ヤーノウッドの戦いではディルと将軍ハリス=マーノッドが2倍もの兵力を持っていたハイランドの黒龍将軍 クリオヌイ=ベィシックと軍師ケイオン=ナフを敗る事に成功した。 それと同じ時期、リングレイドとの交易国でありそもそもの原因であるジャタン王国はリングレイドに 対する態度について決定しかねていた。 戦乱より窮したリングレイドから助力の要請が来ていたが、正軍師であるリエッタ=フースコは リングレイドとの繋がりを断ち、聖主同盟に組するべきだと説いた。 兵力の差は歴然としている。 リエッタはリングレイドに勝機はないと見なしていた。 しかし、ジャタン国王サージズ=ハンルクは忠義に厚き人間であったので、 大陸で唯一の国交を持つリングレイドをそう易々と見捨てる気にはなれなかった。 もう1人の正軍師であるラーンタ=ガゼイルは国王の意見に賛同したが、リエッタの激しい気性と国民の保守的な態度から、上手く事態は流れず平行線の議論を毎日繰り返していた。 そんなジャタンに契機が訪れたのは赤月の終わりの日であった。 その日も無駄な議論をラーンタとリエッタが行っていると、リングレイドの定期船がジャタンに 来たとの報告があった。 定期船とはリングレイドから毎月最終日にジャタンへやってくる船で、 そこから大陸の情報などがジャタンへ届けられる。 もちろん、平常時ならそんな事は当然、というかやって来ない方が問題であるのだが、 リングレイドは戦乱の最中、しかも最悪の戦況である。 そのような危機迫った状態でジャタンに呑気に定期船を送ると言う行為に、ジャタンの者たちは驚いた。 しかし、その驚愕もすぐに納得できた。 リングレイドがジャタンに来た目的は、大陸の情報を伝えるためではない。 ジャタンをリングレイドの属国にする要請であったのだ。 さて、これに驚いたジャタン国王は早速それぞれの島の領主と軍師、将軍を交えて議事した。 しかし、リングレイドの軍事力やそれまでの恩恵を考えると答えは1つでしかなかった。 翌日、ジャタンはリングレイドの属国となった。 ジャタンを加え、戦力的の増加がみられたが、聖主同盟の軍事力に比べるとやはり見劣りがあった。 頼みのディルもボウル・ボーに敗れ(要塞の戦い)国民、兵士の士気の減退が著しくみられた。 しかし986年、ミルンハイム王国が聖主同盟を抜けてヤーノウッド兵団と戦うという驚くべきことがおきた。 ヤーノウッドはその恐るべき攻撃力で3倍はあろうかというミルンハイム正規軍を滅ぼし、 ハイランドも加わってミルンハイム王国を滅亡させたが、 ミルンハイムの行為は直後に起きたガー・ザ・アラームの政変と共に同盟内に大きな動揺を引き起こした。 リングレイドも同盟の混乱に乗じ、戦局を有利に持っていった。 翌年にはガー・ザ・アラームの同盟脱却、戦争からの撤退を宣言させ、士気、軍事力と共に、 リングレイドが有利となっていった。 そして989年、決定的な事が起きる。 ハイランド帝国に政変が起きたのである。皇帝シェザ=ブレイドが将軍であるヴァゴ=イズルヒに殺され、 帝の座はヴァゴ=イズルヒに取ってかわられた。 990年、ヴァゴは聖主同盟の解消を宣言し、リングレイド王国と和解を結んだ。 これにて、都合7年に及ぶ聖主大戦は終わりを告げたのである。 【大陸統一とエフィン=タングラ】 聖主同盟が崩れたから、皇帝が変わったからといって、ハイランド帝国の好戦的な態度は変わりはなかった。 ハイランド帝国は聖主同盟を解消すると、すぐさまヤーノウッド兵団に攻め入った。 リングレイドよりも強大な軍事力をまず叩く事が先決だったからである。 思いも寄らぬ攻撃にヤーノウッドは総崩れとなった。 1008年にはハイランドはルイモンド(旧ガー・ザ・アラーム)やペノルレース、キズガ共和国、 シンバ王国を滅亡させ(解せぬ戦い)、 さらに魔王国家と同盟を結んでリングレイドを包囲した(アンジュ包囲) 一気に滅亡の危機に瀕したリングレイドは抵抗を試みるも、 再び独立国家となったジャタンとハイランドからの包囲網には成す術もなく、リングレイドは滅亡した。 さらにハイランドはエルフへルムと結び、北の島国リングパレイスを占領下におき、 1012年に魔王国家、エルフへルムの賛同を得て国名を「大陸国家」ヴァゴ=イズルヒは「大国王」という位に座し、 事実上の大陸統一を成し遂げた。 1023年、ヴァゴが病死し、跡を継いだのが将軍メランギ=ゼーバッハであった。 しかし1031年にメランギは暗殺される。そして次の王座に着いたのが旧王家のバルツ=ブレイドであった。 バルツはさらなるハイランドの領土拡大を目指し、エルフヘルムに攻め入った。 居住区である森を徹底的に焼き討つという戦略にエルフヘルムは成す術も無く陥落し、 エルフ族は次々と虐殺された(血染めの聖域)。 さらに魔王国家を打ち倒そうと試みるが、成功しなかった(レンバリの乱戦、チェスタの乱戦) 1040年にはバルツは身分令を定めた。 シェザ=ブレイドからのハイランド帝国民を「公民」とし、ジャタンに住む民を「亮民」、 解せぬ戦いで滅ぼされた民を「円民」、リングレイド、エルフを「賎民」とし、厳しい差別制度にさらした。 そんな中、1042年にツィギア領主エフィン=タングラが独立を宣言、公志国家を建国した。 これに呼応して賎民の大部分が公志国家に移った。公志国家の勢いは留まる事を知らず、 1045年には大陸の半分を制圧するまでになったが、軍師ローグス=ミンク、 将軍ジェノバ=ファウストの離反、魔王国家と大陸国家の協定により徐々にその勢力は衰え、 1051年に公志国家は滅亡した。しかし、公志国家の広がりを見て大陸国家はこれ以上の領土拡大は不可能とし、 国をハイランド帝国と変え、その体を自衛国家とした。 それに伴い、旧大陸国家領には様々な小国が生まれた。 |