作・ゆーすけ


コンコン・・コンコン

ん?

サイドガラスを誰かが叩いている

「うわっっ!・・坊ちゃん!!」

降りしきる雨の中、いつも通りの無表情な顔で坊ちゃんが立っていた

「ど、どうしたんです?こんなところでっ・・・」

私は慌てて後部座席のドアを開いて坊ちゃんを迎え入れようとした

「いいのか?・・・シートが濡れるぞ」

「そんなこと構いませんよ。ほら、早く乗ってください」

「・・・ん」

坊ちゃんは小さく頷くと、遠慮がちに後部座席に乗り込んだ

えっと・・・タオル、タオルっと

私はアタッシュボードを開けて何か拭く物は無いかと探した

「あ・・・」

幸いタオルが見つかったが、全身を拭くにはやや小さ過ぎる

「坊ちゃん?とりあえずこれしかありませんが・・・せめて髪だけでも拭いてください」

仕方なく私はそのタオルを坊ちゃんに差し出した

「ありがとう」

坊ちゃんは後部座席から身を乗り出して私の手からタオルを受け取った





私の名は『沢村武(さわむら たけし)』日馬(くさま)家の運転手をやっている30前のしがないおっさんだ
後の席で髪を拭いている少年がその日馬家の跡取り『日馬倫彦(くさま みちひこ)』坊ちゃんだ

坊ちゃんは地元の有名私立小学校に通っている
その学校で坊ちゃんが所属している倶楽部が、今ちょうどここの山荘で合宿をしていて、
坊ちゃんもその合宿に参加していたわけなのだが・・・
明日は日馬家で大事なパーティーがある為、坊ちゃんは今日中にお屋敷に戻らなければならない
で、その為に私がお迎えに来たというわけだ

ところが、見ての通りの大雨
山へ入ったとたん、昼間だと言うのにヘッドライトをつけないと前が良く見えない程暗く、
いくらワイパーが水滴を払っても、後から後から大量の雨水がフロントガラスを覆い、
只車を走らせるだけでも難儀する始末

挙句の果てには山荘までもう少し・・・というところでなんと土砂崩れだ
一本しかない山道は大量の土砂に遮られてしまい、立ち往生する羽目になってしまった

携帯電話は通じないし、さて、どうしたものか・・・
と思案に暮れていたところへ、なんと『坊ちゃん自らのご登場』と相成ったわけである

「それにしても坊ちゃん・・・どうしてわざわざこんなドシャ降りの中傘も差さずに?」

「お前が来るのが遅かったものだからな・・・途中で道にでも迷ったのではないかと思って
 ・・・傘は途中で飛ばされてしまった」

冗談なのか本当なのか今ひとつ判らない
坊ちゃんはタオルを頭に被せて両手でワシワシと掻きながら苦笑いを浮かべてそう言った

「流石に私でもこんな一本道で迷ったりはしませんよ。・・・まぁその一本道が土砂で遮られてこのザマですがね」

私も同じく苦笑いを浮かべ、現状に半ば呆れ肩をすくめる

その後はしばらく沈黙が続いた

雨に濡れた髪を黙々と拭き続ける坊ちゃん

車の屋根を叩き続ける雨粒
暖房の緩い送風
忙しなくフロントガラスを右往左往するワイパー

私はハンドルを握りながら、バックミラーに写る坊ちゃんの姿を只ぼんやりと見ていた

坊ちゃんはドイツ人の血が4分の1入った所謂クォーターで、髪や瞳の色は黒いが、肌は透き通る様に白い
また、歳の割りにスッキリした目鼻立などは同年代の子供達とはまるで違う生き物では無いかと錯覚してしまう程だ

こうして濡れた髪を乾かしている姿など、うっかりしていると見惚れてしまいそうになる

「・・・どうした?さっきからコッチばかり見て」

「あ?・・・え・・あ、いや別に・・・」

おっとっと・・・目が合ってしまった
いやぁ、でもバックミラー越しにあの目で見られると正直ちょっとドキドキしてしまうな
・・・マズイかな?

一瞬奇妙な感覚に囚われかけた私はバックミラーから視線を外した

「ははっ・・・」

自然と自嘲の笑が漏れた

「何が可笑しいんだ?まったく・・・解らない奴だな、沢村は」

なるほど、聡明な坊ちゃんでも今の私の思考は理解できないらしい

「ふふ・・ははは」

私はそれが可笑しくて何故だか笑わずにはいられなかった

「・・・・ふふっ」

それにつられるように坊ちゃんも控え目に笑った





「ああー・・・こりゃダメですね、坊ちゃん」

「どうしたんだ?」

「橋が沈んでます」

道を引き返してようやく麓まで降りてきてみると、先程渡って来た橋が増水した川に見事に沈んでしまっていた

「・・・・他に道は?」

「ありません」

「・・・・・・・・」

この橋さえ渡れば国道まではすぐだというのに・・・
私は行く手を遮る濁流を忌々しげに見詰めた

「前は濁流、後ろは土砂・・・これなーんだ?」

「何だ?それは」

「なぞなぞ?」

「・・・問題を出した方が訊いてどうする」

「答えは大雨でしたー」

「そのまんまだな・・・・少しは捻れ」

「うーん、かなりマニアックなプレイになりますけど・・・」

「言っておくが、セクハラは減俸だからな」

「うっ・・坊ちゃん手厳しい」

打開策が見つからず、苦し紛れにとった「ジョークで場を和ませよう作戦」は見事に失敗に終わった





「・・・くしゅんっ」

「坊ちゃん?」

「ん・・・・ふぅ。・・・沢村、着替えは・・・無いよな?」

坊ちゃんは後部座席の隅で体を小さくしながら上目遣いに私に尋ねた

「申し訳ありません、まさかこんなことになるとは思わなかったもんで・・・」

本当に申し訳ない気持ちだった
旦那様に叱られるとか、そういうことでは無い
小さくなって震えている坊ちゃんを見て、どうすることも出来ない自分が歯痒くて仕方なかったのだ

「いや、いい。沢村は何も悪くない。1人で雨の中を歩いてきた私が阿呆なのだ」

「・・・あの」

「なんだ?」

実はさっきから気になっていたのだが・・・

雨に濡れたYシャツが肌に張り付いて気持ち悪くは無いだろうか?
ズボンやパンツもきっと大量に雨水を吸っているに違いない
坊ちゃんの座っている部分のシートが濡れて黒っぽくなっている

「えっと・・・その・・・いっそ服を脱いでしまってはどうです?」

「なに?!」

坊ちゃんが驚いて目をまるくする

「いや、あのっ・・・しばらくここから動けませんし・・・別に誰も見てませんから」

心臓がバクンバクンと脈打っている
別に変な下心があるわけではない
純粋に坊ちゃんのことを心配して言っているだけなのだ

の筈・・・なのだが

「一応車内は暖房が効いてますから裸でも寒いことはないと思います。
 濡れた服を着たままではかえって良くないのでは?」

なんだか言えば言うほど言い訳くさいが・・・

「・・・・・・・・」

坊ちゃんは長い睫を伏せて俯いている

「・・・・・・(ゴクリ)」

私は何故か緊張しながら坊ちゃんの反応を待った

「わかった・・・沢村、しばらく向こうを向いていろ」

「はい」

「バックミラー」

「・・・承知しました」

私はバックミラーを明後日の方向に向け、運転席に深く腰掛けた
そして窓の外に視線を向けた
しかし窓に打ち付ける大量の雨に視界は遮られてしまった





ごそごそ・・・

運転席のシート越しに坊ちゃんの気配がする

今Yシャツのボタンを外しているのだろうか?
指が悴んで上手く外せなかったりはしないだろうか?

グッ

微かに車体が揺れた
きっと坊ちゃんが腰を浮かせたのだろう

今度はズボンを脱ごうとしているのだろうか?
濡れた生地が足に絡み付いて脱ぎ難くはないだろうか?

次は靴下かな?それとも・・・

「沢村?」

不意に坊ちゃんが私の名を呼んだ

「はいっ?!」

びっくりして声が裏返ってしまった

「すまないが上着を貸してもらえないか?流石に全裸では少々落ち着かない」

「はっ、はい!勿論構いません。ちょ、ちょっと待ってくださいね」

私は慌てて上着を脱ぎ、後ろを見ないようにしながらそれを手渡す

「すまない・・・しばらく借りるぞ」

「いえ、お構いなく」

どきどき

全裸・・・
坊ちゃんが全裸

一糸まとわぬ姿で私のすぐ後ろのシートに座っている
・・・肌着も着けずに直に私の着古した上着を身に纏っている

いったいどんな表情をしているのだろうか?
いつもクールな坊ちゃんでもこんなときばかりは頬を赤らめたりするのだろうか?
まさか・・・興奮して股間を膨らませていたりはしないだろうか?

・・・・・・・・・って、私は馬鹿か?
坊ちゃんに限ってそんなことがある筈が無かろう
それでは只の変態ではないか
男同士でこんな・・・
股間を熱くしている・・・私は

「もういいぞ・・・」

「え?・・・・何がです?」

「いや・・・何かその・・気を遣っているようだから・・・
 一応上着も羽織っているし、見られても気にならん」

「あ・・ああ、そうですか」

言われて私はバックミラーに手を伸ばし、元の角度に戻す

「・・・・・・・」

あれ?なんか坊ちゃん・・睨んでる?

「え・・・と・・・・なにか?」

「何故わざわざバックミラーで覗く?・・・普通にこっちに顔を向ければ良いではないか」

「あっ・・いや、あの・・・すみません」

とは言ったものの・・・やっぱり直接顔を向けるのはどうにも照れくさい
結局、叱られながらも私の視線はついついミラー越しに坊ちゃんの姿に向いてしまうのだった





「沢村・・・エンジンを止めろ」

「え?」

雨は徐々に小降りになって来ていた
しかし空は相変わらず厚い雲に覆われたまま
時刻は午後5時を過ぎ、じきに真っ暗になるだろう
多分今夜はここで夜を明かすことになる

「何言ってるんですか・・・暖房がないとその格好じゃ寒いですよ」

季節は春
最近では汗ばむような日も結構多くなってきたとは言え、
このあたりは夏でも割と涼しい気候が売りである
ましてや外は一日中降り続く雨
夜にもなれば服を着ていても寒いくらいだ

「ガソリンのメーターを見ろ。明日の朝には動けなくなる」

確かに・・・
このままエンジンを掛けっぱなしにしていれば下手をすれば夜の間にガス欠の恐れもある

「風邪惹きますよ・・・ほんとに」

「・・・・・」





結局坊ちゃんの指示に従ってエンジンを切ることにした
幸い暖房無しでも思っていた程寒くはなかった
あくまでも私は・・・だが

「坊ちゃんは寒くないですか?」

「・・・ん」

坊ちゃんはシートの上で膝を立て窓の外を見ながら、どちらともつかないような返事をした

「お腹空きません?」

「・・・少しな。・・・・・何か食べるものがあるのか?」

「あ・・・いえ、すみません・・無いです」

言ってしまってから自分の考え無しの発言を恥じた
ああ、なんと情け無い・・・

「・・・くしゅんっ」

また坊ちゃんがクシャミをした

「やっぱり寒いんじゃないですか?・・・暖房つけましょうか?」

「いい。余計なことはするな」

・・・結構意地っ張りだ

・・・・・・・・ちょっとからかってやろうかな?

「坊ちゃん・・・ガソリンを使わずに暖をとる方法がありますよ」

「・・・・何だ?」

「えーと、・・・ほら、雪山で遭難した男女が・・・」

「却下」

はやっ!

「シモネタは禁止した筈だぞ」

「うぐっ・・・」

しまった・・・坊ちゃんを相手にしていると小学生だという気がしないから、つい・・・

「セクハラだな」

「あうっ・・・」

「減俸だな」

「ぐはっ・・・」

「変な声を出すな・・・気色悪い」

「ああ、そうですよねぇ・・・こんなむさ苦しい男とひっついて寝るなんて、そりゃぁ気色悪いでしょうね」

坊ちゃんとの掛け合いが楽しかったので、私はちょっぴり茶目っ気を出して拗ねた演技などしてみた
すると

「ああっ、違う違う・・・お前が変な声を出すから・・・別にお前のことを嫌っているわけではない」

「・・・じゃぁ坊ちゃん、私と肌を重ねることには異存無いんですね?」

「それとこれとは別だ」

そりゃぁそうなんですけどね・・・

「でも、実際くっつくと暖かいですよ?」

と、食い下がってみたりして

「・・・・・・・」

ここで少し真剣な眼差しで見詰めてみる

「・・・・・・・」

ダメかなぁ・・・
ダメだよなぁ・・・

「何もするなよ・・・」

え?

「只、肌を合わせるだけだからな」

お・・・マジっすか?

「私がそっちへ行こうか?それとも沢村がこっちへ来るか?」

「あ、えと・・・じゃぁ私がそっち行きます」

よっこらせっと・・・

私は靴を運転席に脱ぎ捨てて、いそいそとシートの間を乗り越えて後部座席へ移動した

・・・言ってみるもんだなぁ





で、だ・・・
なんで私はこんなに喜んでいるのだろうか
ちょっと坊ちゃんをからかってみるだけだったんじゃないのか?

うーん・・・

ま、いいか
深く考えるのは止め

この際だからとことん悪ふざけしてやるか
いつも坊ちゃんには逆らえないんだから・・・

「どうです?少しは暖かくなりましたか?」

私は口元をニヤニヤさせながら坊ちゃんに話し掛けた

「そうだな・・・あまり変わらない様な気がする・・・」

坊ちゃんは私の顔を見ずにボソボソと呟いた

「やはりそうですか・・・こういうのはお互い裸でないとあまり効果がないですからね」

「・・・・」

「脱ぎましょうか?」

答えを待たずにせっせとシャツを脱ぎ始めた私に対して、ようやく顔を上げた坊ちゃんが一言

「楽しそうだな?・・・沢村」

脱ぎかけたシャツを腕に引っ掛けたままの姿勢で固まる私

「あ・・・ははっ・・・ははは」

笑って誤魔化す

「まぁ、仕方ないから付き合ってやる。くだらない余興だが多少は気も紛れるだろう」

坊ちゃんはそう言うと再び視線を窓の外に向けて黙ってしまった

・・・・・
ま、一応お許しが出たようなので
私はそそくさと衣服を脱ぎ去るのでした・・・っと




坊ちゃんは物憂げに頬杖をついて、視線は相変わらず窓の外
それを横目に見ながら私はスッと身体を寄せる

ピタ

「う゛・・・」

お尻とお尻が触れ合った瞬間、坊ちゃんは小さく呻いて眉を顰めた

私の方はというと・・・
これが結構気持ち良い
坊ちゃんの肌は赤ん坊のようにすべすべしていて、それでいてしっとりと・・・
最初は少し冷たく、だがやがて触れ合った肌にじんわりと熱が生まれてくる

肩が触れ合う
二の腕が触れ合う
そして太股が・・・

「触れ合う面積が増えると暖かさも増します」

「なるほど・・・理論的だな」

そうなのか?

よく分からないが、とにかく今は本能が触れ合うことを欲しているようだ
少しでも多くの部分で坊ちゃんと触れ合いたい

「・・・・・」

私の膝が坊ちゃんの膝の下に割り込んで行く
坊ちゃんは両膝を立てて、それを腕で抱え込むような姿勢で座っている
俗に言う体育座り・・・又は三角座り
対する私は胡坐
私の右膝が坊ちゃんの左足の下に潜り込む

「っ!?」

坊ちゃんが一瞬身体をびくっと震わせた

「ほらほらっ・・・あったか〜い」

「・・・・・・」

何故か坊ちゃんがジト目で私を睨む

「・・・あたってる」

「え・・・・何が?」

すっと、坊ちゃんが少しだけ腰を上げて私の膝から逃げる

その瞬間理解した

「あ・・・坊ちゃんのタマタマ♪」

柔らかくて小さくて可愛らしい坊ちゃんのタマタマが、私の左膝にあたっていたのだ

「ああ・・・暖かくて気持ちが良かったのに・・・」

「やめろ・・・」

坊ちゃんがウンザリしたような表情で1つ溜息を吐いた

「えっと・・・どうせなら私の膝の上に来ませんか?その方が絶対暖かいですよ」

調子に乗って私が提案すると

「その場合、今度はソレが確実に私の尻にあたることになるのだが・・・」

坊ちゃんは微かに頬を赤らめつつ私の股間でいきり立っているモノを指して言った

「げ・・・」

「気付いていなかったのか?」

「あ・・その、これは・・・えーと・・・」

指摘されて私は途端に恥ずかしくなって、しどろもどろになってしまった

「沢村にはそういう趣味があったのか・・・」

しかしそう言った坊ちゃんの顔には先ほどまでの硬い表情は見られなった
それどこか僅かに笑みさえ浮かべている

「ココが1番暖かいんですよ」

私は開き直ってソレを誇示して見せた

「・・・」

今度は坊ちゃんが絶句する

「どうします?座ります?」

何だか楽しくてしょうがなくなってきた♪





いつの間にか雨は完全に止んでいた
外は完全に日が暮れて深い闇に包まれ、
車内は互いの息遣いが感じられる程に静かだった

私の胸に坊ちゃんの柔らかい髪が掛かっている
スゥっと息を吸い込めばほんのりと甘い香りが鼻腔に流れ込んでくる

不意に坊ちゃんが顔を上げた

「沢村・・・くすぐったい」

「え?」

「顎を擦り付けるな」

「あ・・・、すみません」

ぼーとしていた私は何のことか分からぬまま謝った
すると坊ちゃんは上体を捻り、私の頬へ手を伸ばした

「それとなぁ・・・髭くらいちゃんと剃れ」

坊ちゃんの小さな手が私の頬から顎、首筋をゆっくりと撫で摩る
車窓越しの月の明かりに照らされた坊ちゃんの顔が妙に色っぽく見えた
その瞬間私の身体に得も言えぬ衝撃が走り抜けた

「坊ちゃんっ!」

私は両腕で坊ちゃんの小さな身体をぎゅっと抱き締めていた

「わっ!な・・何をする、沢村!?」

驚いた坊ちゃんが私の手から逃れようとしてもがく
しかしその程度の力ではビクともする筈がなかった

「くっ・・苦しい・・・放せ・・沢村っ」

・・はっ!

「す、すみません」

私は慌てて腕の力を弱めた

「その・・えと・・・なんか坊ちゃんが急に色っぽいことをするもんだから・・・つい・・・」

咄嗟に言い訳とも何ともつかない妙なことを口走ってしまった
・・・まぁ、しかし嘘ではない
その仕草にクラッときたのは事実なのだから

相手が男だから・・・とか
小学生だから・・・とか
そんなことは一切関係無かった

ただ、『愛しい』と

「はぁはぁ・・・まったく・・・加減をしろ、加減をっ!
 ・・・今更抱きつかれたくらいで逃げたりはしない」

「は・・はい。分かりました」

どうやらそれほど怒ってはいないようだ
・・・良かった

「沢村・・・キス・・してやろうか?」

「え?!」

坊ちゃんの突然の申し出に、私は一瞬耳を疑った

「えっ、え?キス??・・・どうしたんですかっ突然!」

「馬鹿・・・勘違いするな。
 放って置いたらお前が何をするか分からんから、この辺で手を打たないかと提案しているのだ」

でも、そんな事されたらきっと歯止めが効かなくなりますよ?・・・今の私は
・・・そう思ったが口には出さなかった

「キスまでだからな・・・それ以上は何もするなよ?」

坊ちゃんはそう念を押すと、目を閉じゆっくりと顔を寄せてきた
小さな手が遠慮がちに私の胸に添えられる
白い喉を反らせて坊ちゃんの顔が徐々に私の顔に近づいてくる
私は汗ばんだ両手をシートについて、少しだけ顔を右に傾けた

「・・・んっ」

ちゅ

唇と唇が触れ合う
が、それはすぐに離された

「え?・・・今ので終わり?」

「終わりだ。・・・何か不服でもあるのか?」

「いや・・・だって、今の唇じゃなかったですよ?」

「何?」

嘘だけど・・・
でもあれじゃ流石に納得がいかない
幸い坊ちゃんは目を瞑っていたので分からない筈だ

「・・・じゃぁ、もう一度だけだぞ」

・・・・・・

ちゅ

先ほどと同様に一瞬だけの口付け

「こっ・・今度は口だったろう?」

「いいえ、またハズレです」

私は再びいけしゃあしゃあと嘘を吐いた

「・・・くっ、騙していないだろうな?沢村」

ぎくっ
一瞬バレたかな?と思ったが、なにやらツッコミにいつものキレが無い

いける・・・
今日こそは主導権を握れそうだ
そう確信した私は更に強気で攻めてみることにした

「例え目を開けていたとしても暗くてよく見えませんしね。
 もうちょっと長く唇で感触を確かめてみないことには・・・」

私がそう言うと、坊ちゃんは困ったような拗ねたような表情をしながらも

「分かった」

小さくそう言って、再び顔を上に向けた

今度は私が坊ちゃんの頬に手を沿え、唇に唇を重ねる

「んっ・・・んん・・・ん・・」

坊ちゃんの手が宙をさ迷う
私の手を掴もうとして・・・しかし思いとどまってまた引っ込めて・・・
そんな感じの動作が繰り返される

「んっ!!・・・んー、んー・・・ぷっ・・はぁ・・ぐ・・」

しかし私が口の中に舌を入れた途端、坊ちゃんが激しく抵抗を始めた

「ばっ、馬鹿!誰が舌を入れて良いと言った?!」

「このくらいは『キス』のうちに入ってますよ・・・」

そう言って私は再び坊ちゃんの口を自分の口で塞いだ

「んー、んーーー!」

ドサッ

いつの間にか私は坊ちゃんの身体をシートの上に押し倒していた

「んっ・・ちゅ・・はぁ・・・」

私は何度も何度も坊ちゃんの口内を犯しながら、
時には頬や額・・・耳や胸元にも唇を押し当てた

「はぁはぁはぁ・・・ん・・ちゅ・・んん・・ちゅばっ」

いつしか坊ちゃんの身体からは力が抜け、私の愛撫を素直に受け入れてくれるようになっていた
私が坊ちゃんの髪を優しく掻きあげてあげると、坊ちゃんは自分から唇を寄せてきてくれた

私は坊ちゃんと舌を絡めながら、指で坊ちゃんの乳首を弄ってみた

「・・・・・・・それはどうなんだ?」

口付けの合間を見計らってすかさず坊ちゃんがそれを指摘した

「『キス』の延長です」

「・・・延長まで認めたら・・・んっ・・・・キリが無いな・・・はぁ」

「この際だから最後まで行っちゃいませんか?」

「最後までと言われてもな・・・」

「経験が無いから分かりませんか?」

「男同士でするのなど、知識の上でも有りはしない」

「それじゃぁ、勉強ってことで・・・」

「減俸は覚悟しておけよ」

・・・・・・
まぁ、クビにならないだけマシだろう
これだけのことをしているのだから・・・





「あの・・坊ちゃん、この上着もう取っちゃって構いませんか?」

坊ちゃんの胸や脇腹に手を這わせながら、
ちょっと邪魔になったきた上着を摘まみながら私は言った

「・・・・・・・・」

坊ちゃんは目を閉じ、無言のまま上着の袖から腕を抜こうとした

「あ、待ってください。私が脱がせたいんですよ」

「・・・・・・・
 はぁ・・・好きにしろ」

坊ちゃんは動きを止め、横目でジトっと私の顔を覗き見た後、
呆れたように深い溜息を1つ吐いてからそう言った

私は上着と坊ちゃんの身体の間に手を滑り込ませ、
坊ちゃんの肌を撫でながら焦らす様にゆっくりと上着を脱がせていった

「ん・・・」

時折坊ちゃんの身体がピクンと震える
徐々に呼吸が荒くなってゆくのが分かった

そして上着が肩からはずれ、音を立ててシートの上に落ちたとき
坊ちゃんの股間で可愛らしいモノが精一杯に自己主張している姿が目に入った

「あ・・・坊ちゃん・・・勃ってますね」

そのときの私の声は明らかに弾んでいた

「・・・誰の所為だ」

「ふふふ、私の指で感じてくれたんですね?沢村は嬉しゅうございますよ」

何だか嬉しくて仕方なかった
坊ちゃんも自分と同じように感じてくれていたのだ
私はそれが何よりも嬉しかった

「・・・・・・・」

「もしかして照れてます?」

「・・・ばか」





きっかけは私の些細な悪戯心だった
だがしかし、私にもともとそのケがあったのか
或いは坊ちゃんの魅力が私を狂わせたのか・・・
心と身体の昂ぶりは留まる所を知らず、あとはもう流れに身を任せて行き着く処まで行く他なかった

私も坊ちゃんも気分は十分に高まり、
股間の強張りもいよいよ限界まで膨れ上がっていた

「あぅっ・・・・」

お尻の窄まりに舌を這わせたとき、坊ちゃんはまるで女の子の様な可愛らしい声で鳴いた

「あ・・・今の声、とっても可愛かったですよ」

「ば、ばか・・・」

後ろから見た坊ちゃんの耳たぶが真っ赤になっていた

「声・・・もっと聞かせてくださいよ」

私はその声をもっと聞きたくて、執拗に坊ちゃんの肛門を舐めた

ぴちゃぴちゃぴちゃ

「ん・・・っく・・・んん、・・・ふっ・・ぅ」

坊ちゃんはシートに顔を埋めて声が漏れるのを必死で堪えていた

「はぁ・・はぁ・・・カワイイっ・・・カワイイですよ、坊ちゃん!」

ちゅばっ、ちゅばっ、ちゅぶぅ

私は興奮して滅茶苦茶に坊ちゃんの尻の穴を吸い立てた

「ひっ・・ふぅっ・・・やっ、やぁっ・・・・んああっ!」

坊ちゃんはとうとう耐え切れなくなり、声を上げて身悶え始めた
私はその反応に気を良くし、今度は舌を尖らせて肛門の内部に侵入を試みた

ちゅっちゅっ・・・くち・・くぽっ・・

捩じ込まれた舌が肛門の裏側を嘗め回す

「んっ・・はっ・・やめ・・・ああっ」

坊ちゃんの口からはもう意味のある言葉は出なかった
私は空いた手で坊ちゃんの太股の間にぶら下がった竿と袋を柔々と揉んだ

坊ちゃんの可愛らしいイチモツが私の手の中でビクンビクンと跳ねる
それと連動して坊ちゃんの肛門も私の舌を締め付ける

「坊ちゃん?・・・あの・・そろそろいきますよ?」

「え?・・・あ・・なに・・が・・っ」

坊ちゃんはシートの上に頬を乗せたまま、潤んだ目でこちらを見た

「これを・・・坊ちゃんのここに入れるんですが・・・」

「・・・・・・入る・・のか?」

それを見て坊ちゃんが不安そうに目を細める
流石に怖いのだろう
確かに・・・大人でさえこんな太いものを肛門に挿入されるとなれば泣いて逃げ出したくなるだろう
それをこんな小さな身体で受け止めようというのだから・・・

「えっと・・・・痛かったら我慢してくださいね?」

私は坊ちゃんの細い腰を捕らえ、お尻の窄まりに剛直を沿え、最後の確認をした

「・・・・沢村・・・・痛かったら止めてくれるのではないのか?」

・・・以外に冷静なツッコミ

「いやぁ・・・多分私途中で止まれそうにありませんので・・・ハハ」

「・・・・・」

私のあまりの率直さに、流石の坊ちゃんも返す言葉が無いらしい

「え・・と、兎に角・・・いきますよ?」

「・・・・・ん」

返事だろうか?
坊ちゃんの小さな呻きを聞いて、とりあえずそれを承諾ととった私はゆっくりと腰を進めた

私は右手で自分の剛直をしっかりと握り、坊ちゃんのお尻の窄まりに狙いを定め、
固く閉じた襞を抉るように少しずつ広げながら徐々に押し入っていこうとした
ところが・・・

「ぐっ!・・・痛い、いたいっ、沢村・・・!」

いくら入れようと躍起になっても、坊ちゃんの小さな窄まりは私のモノを受け入れてはくれなかった

「あっ・・くそっ、こいつ・・・」

「さわむらーーーっ」

坊ちゃんの絶叫に私はやっと我に返った

「あ・・・」

坊ちゃんは薄っすらと目に涙を浮かべていた
流石に心が痛んだ

私は挿入を諦め、坊ちゃんから身体を離した





「やっぱり無理だ・・・どう考えてもそんなもの入るわけが無い」

坊ちゃんはお尻を手で隠しながら、私から距離をとった

「ええー・・・、ここまで来てそりゃ無いですよぅ」

私は不満いっぱいという感じで言った

「仕方ありませんね・・・・それじゃ、次のうちから選んでください」

尚も諦めきれない私は、坊ちゃんに幾つかの妥協案を提示した

「@アナルセックスAフェラチオBスマタ」

結局私は自分さえ気持ち良くなれればそれで良いという考えだった・・・

「すまた・・・っていうのは何だ?」

「素股です。股で挟んでナニを扱くんですよ」

「痛くは・・・無いんだな?」

「はい、それは大丈夫です」

「じゃ、じゃぁ・・・スマタ・・で・・・」

そういうわけで今回はスマタに決定
正直ちょっと残念ではあったが、とりあえずは良しとしておこう

それに坊ちゃんの身体ならスマタでも十分にキモチ良いのではないかという期待があった
なにしろ坊ちゃんの肌はそんじょそこらの女なんかでは到底太刀打ちできない程の木目細かさを持っているのだから

私は坊ちゃんに先ほどと同じような四つん這いの姿勢をとらせ、股の間に自らの剛直を突き入れ後ろから抱き締めた

「坊ちゃん、挟んでください」

「ん・・・こうか?」

坊ちゃんが膝を閉じる

「うあっ・・・熱いっ」

内股に感じた熱の塊に坊ちゃんが思わず声を漏らした

「そう・・・そのまま締めておいてくださいね・・・」

そう言って私は腰を動かし始めた

「ああ・・坊ちゃんのタマタマが・・竿にあたってますっ」

「い・・言うなっ、馬鹿者!」

それは独特の感触だった
柔らかいタマ袋が腰の動きに合わせて竿の上でタフタフと揺れるのだ

「ん・・・はぁ・・良いです・・気持ち良いですよ・・坊ちゃんっ」

私は坊ちゃんの太股を外側から手で押さえ、自分の腰の動きに合わせ強弱をつけながら締めたり緩めたりを繰り返した
しばらくそうしながら腰を振っていると、坊ちゃんの方もタイミングを覚えたのだろう、
私が最もキモチの良いリズムで自ら動いてくれるようになった

私は空いた手を、今度は坊ちゃんの股間にもっていった

「あっ・・・こ、コラ!」

「坊ちゃんも・・・坊ちゃんも一緒に気持ち良くなってくださいっ!!」

私は坊ちゃんの可愛らしい股間の強張りを皮の上から激しく扱いた

「あっ・・・うくっ・・だ、ダメ・・だっ・・そんなに強くしたら・・・あっ!」

ビュッ

ボタボタッ

シートの上に熱い液体が降り注いだ

「あっ・・・あっ・・・」

坊ちゃんが身体を痙攣させてビクビクと震える

「ぼ、坊ちゃん・・私も・・沢村もイきますっ!」

グッ

最後に渾身の力を込めて坊ちゃんの尻に強く腰を叩きつけた

「あっ!!」

私の熱い迸りを腹に受け、坊ちゃんが驚きの声を上げた

私はすかさず坊ちゃんの身体を仰向けにすると、、
その白い体めがけて残った精液をこれでもかとばかりに搾り出した

人形のように力無くシートの上に転がった小さな身体が、
私の薄汚い白濁液で汚されてゆく

私は未だ硬度を失いきっていないイチモツを萎えかけた坊ちゃんのソレにグリグリと押し付けた

「はぁはぁはぁ・・・」

私は何かに憑かれたかのようにひたすら坊ちゃんのソレを自分のモノで捏ねまわした
精気の無い表情でぼうっとその光景を見詰め続ける坊ちゃん
しかし暫くすると坊ちゃんのソレも再びムクムクと起き上がってきた
2本の角は互いの精液で滑り輝きながら絡み合った
そしてもう一度激しく射精し大量の精を放った





翌朝
日が昇る少し前くらい
なんとか橋が渡れる程度に水位は下がっていた

私は早速国道へ出て、一路お屋敷へ向けて車を走らせていた
道は早朝ということで割りと空いており、車は快調に走り続けた

この調子ならどうやらパーティーには間に合いそうだな、
と目処が立つところまで帰ってきたところで坊ちゃんが目を覚ました

「・・・沢村、今どの辺だ?」

「もうじきお屋敷に着きますよ。この調子ならパーティーには十分間に合います」

「そうか」

「ところで坊ちゃん・・・」

「なんだ?」

「シートに付いた精液って・・・落ちますかねぇ?」

「・・・・・・・・・・・知るか、馬鹿者」




END



あとがき
見ての通りです。
オッサン×少年(爆)

一応「萌え」重視で書いてみたつもりですが・・・どうでしょう?
正直このテのって良く分からないんですがね、僕自身(苦笑)

よかったら感想お願いします。