カサ・・
カサカサカサ

ん・・・あっ。
やっ、ああん・・くすぐったい。
お腹の上で何かが・・何かが・・

奇妙なくすぐったさ・・・と言うか痛痒さのようなもので目が覚めた。

「はっ!」

シャカシャカシャカ・・・

「きょええええーーーっ!」

なんじゃコリャー!!

ゴキブリ・・じゃない、フナムシ!
それと蟹!!

何故か俺の腹に沢山の海辺の生物達が群がっていた。

「いぃててててっ!・・痛えっての、コラ!」

兎に角どけっ・・嫌っ、気色ワルっ!

パッパッパッ

俺は慌てて腹の上の虫どもを払い落とした。

ああ・・手に当たる感触が・・・(←サブイボっサブイボっ)

カサカサッ・・ガシャ・・ガシャ・・

大量のフナムシと蟹がベッドから音を立てて落ちてゆく。

それにしても凄い数・・・

蜘蛛の子散らすって表現があるが、そんな感じ?
黒い虫の集団が、波が引くみたいにザーって部屋の隅っこに移動して固まってく。

うわっ・・・数千匹は居るかな?・・・うひぃ。

・・・・・・

「げっっ!」

ミンチ、ミンチっ・・・良く見たら俺の腹、どくどくモンスター!!

ひぃぃいいっ!!
オラ東京さいぐだ!(←恐怖に気が動転)

気持ち悪ぅぅ・・・吐く!

「おげぇぇぇっ」(←おゲロ発射)

・・・って、
うわぁぁ、傷口にゲロがぁぁっ!(←最悪)
更に見られないモノにーーー!!

・・・・・・

あ、でも何か、身体の方は動けるっぽい。
俺様もスゲー。

・・・って、感心してる場合じゃないじゃん。
早いとこ逃げなきゃ。マジでヤバイよココ。
いくら田舎っても診察室に蟹が入ってくるってのは尋常じゃないだろ?
ウン、蟹だよ?蟹。
患者を蟹の餌にするなっちゅーの!
チクショー、あの藪医者め・・・捕まえてお尻ペンペンしちゃるゼ!





「居ねーーっ!!」

診療所の中をさんざん捜し回ってみたのだが、人の気配が全く無い。

「医者居ねーし!」

看護婦は?
白衣の天使・・・もとい、白衣の小悪魔ちゃん!

・・・・・・・・

「うわーん、誰も居ないよぉ〜」(←泣く)

ガンガンガン(←その辺の物にあたりちらす)

もうやってらんねー、俺様帰るもんね。
フンッだっ(←フテた)





りーりーりー・・・(←虫の声です。今度はボケません)

人気の無い田舎道を歩くこと30分。

「・・・・・・」

「ああっもうっ!これだから田舎は嫌なんだよ!
 どこまで行ってもタクシーもねえ!バスもねえ!」

歩いて帰れっつーのかよ?クソがぁ!
俺様怪我人よ?これでも。

「オラこんな村嫌だー、オラこんな村嫌だー♪」

歌っちゃうし。(←元気だな?オイ)

てくてくてく・・・(←足取りもしっかり)





はっ!
ココさっきの事故現場じゃん!
何戻って来てんのっ?!

・・・なるほど。
何も考えずに歩いてたから無意識に知った道を通って来た・・・というわけか。
そうすると、当然ココに戻ってくるって寸法だな。
やったねワトソン君、相変わらずの名推理だよ♪

『犯人は必ず犯行現場に戻ってくる』

つまり犯人は俺だーー!

「んなわけ無いじゃん!!」(←1人乗りツッコミ)

イカン・・血を失って脳が酸欠になっとる。
血・・・早く血を補充しねーと・・・

ガツガツガツ

「そうそう、あんな感じに血の滴る生肉にやおら貪りついて・・・」

暗闇の中、突如俺の目の前に現れた人影。
ひっくり返ったバスの陰で、白い服を着た男がなにやら一心不乱に巨大な肉の塊に食らいついていた。

・・・って、おいっ!!
人間食ってねーか?あれ!
嫌あぁぁぁっ!アノヒト、人肉食ってますよぉぉっ!

ムシャムシャ・・ボリボリ(←アノヒト)

カニバリズム?
カニ・・・蟹はもう結構っ!(←トラウマ)

・・違う!蟹じゃない、カニバリっスよ、食人っ!

「え、えと・・・
 とりあえずここは見なかったことにしまして・・・・」(←ことなかれ主義)

俺は歯の根が合わぬ程ガタガタと震えながら、ゆっくりと後ず去った。

パキッ

いやーんっ、何でこういうときに限ってちょうど足の下に枝なんかあるんですかー!?(←お約束)

グッチャグッチャ・・バリバリ(←アノヒト)

・・・らっきー♪。アノヒトお食事に夢中で気付いてないよん。

「あら〜、患者さんどうしてこんなところに?」

へっ?

「ダメじゃない、勝手に抜け出してきちゃ」

あれれれ?アンタは白衣の小悪魔ちゃん?!

「あああっ、アンタこそ・・ど、どうしてここに?!」

「あらあら・・・声が震えてるわよぉ?」

小悪魔ちゃんはにっこりと微笑んで、俺の首筋にそっと手を伸ばした。

「い、いや・・目が覚めたら誰も居ないし、そ・・それに蟹が・・・」

「・・・蟹?」

「そうそう、俺の腹にですね、フナムシと蟹の大群が・・・・
 って、そうっ!蟹じゃなくてカニバリなんスよっ!!」

「あらやだ、やっぱり脳に異常があるみたいだわね。
 ちゃんと診た方がいいみたい・・・・・・ねえ、センセイ?」

「うむ、そうだねぇ」

え?

いつの間にか看護婦の隣にあの診療所の医者も立っていた。

「うわあああああーーーーーっ!!
 そ、ソレっ、ソレ!!」

「ん?・・・・ああ、これかい?
 これはアレだよ、えーと・・・そう、研究サンプル」

そう言って医者のおっさんは首の無い死体の襟首を掴んでプラプラと振って見せた。

「アンタそれさっき食ってただろーがっ!!」

「ありゃ・・・見てたの?」

医者はバツが悪そうに頭をポリポリと掻いた。

「センセイ?せっかくだから患者さんにも一口おすそ分けして差し上げたらいかがです?」

「おおっ、それは良いですね」

良くねーっ!
そんなもん誰が食うか!
そうやって俺を共犯にするつもりだろうが!

「ほらほら、少女の死肉なんてなかなか食べれませんよ?」

俺が必死で首を横に振って拒否しているのに、オッサンは構わず良さそうな肉(かどうかは良くわからんが)をメスで切って寄越す。

「いらんっつってるだろーが!」

「ははは、最初はちょっと抵抗がありますがね。一度食べたら止められない美味しさなんですよ?」

「そうそう、やめられないとまらないー♪」

かっ○えびせんかっ!

って、ああっ!いつの間にか俺、看護婦さんに羽交い絞めにされてるぅー!?

「はい、お口アーンしてくださーい」

ぶんぶんぶんっ(←歯を食い縛り首を振って拒否)

「仕方ありませんね。美由紀君、例のヤツで・・・」

「ハイ、センセ♪」

え?なに?

「んっ!・・・んーんー??」

突然、何を思ったか美由紀と呼ばれた看護婦は俺の唇に自分の唇を押し付けてきた。

「んっ・・・・・・・ごくん」

・・・何か飲み込んじゃった。

ああ・・それにしても、看護婦さんの柔らかい唇の感触が〜〜。(←うっとり)

はっ!

「い・・今何を食わせたんだ!?」

「うふふ・・・どうだった?少女の柔肉のお味は?」

看護婦は口元から真っ赤な血を滴らせながら妖艶に微笑んだ。

ぎゃああああ!やっぱそうか!
うわっ、俺、人間の肉食っちゃったよぉぉっ!!

「お、思わず飲み込んじまったじゃねーか、バカヤロー!」

「おやおや、ちゃんと味わって食べなければ勿体無いではないですか」

医者は「やれやれ」といった表情をつくって肩を竦めた。

「まぁ、しかしこれで君も共犯(なかま)というわけだ♪」

共犯と書いてナカマとか言うなー!
このキチ○イどもーーっ!

「俺は無理矢理食わされただけだ!
 お前ら『死体損壊』の現行犯で突き出してやるからな!」

俺は不意を突いて看護婦を振り解いた。

「・・・・・・・
 困りましたねぇ。それじゃ、不本意ながら口封じをしないといけません」

やはりそうくるか、このクソオヤジめ!

俺はすぐさま2人から距離を置いて身構えた。

「くっくっく・・・また死体が1つ増えますよぉ」

医者はギラギラと輝くメスを両手に1本づつ握ると、ベロリと舌舐めずりをした。

けっ、そんなちっこいナイフで俺様に勝てるかよ!

ぽいっ

「うおっ!」

惜しい!

俺の投じたパイナップル爆弾(←石)を辛うじて避ける医者。

「ふっふっふ、コッチには飛び道具があるんだゼ」

俺は足元から新たな弾(←石)を補充し再び医者に狙いをつけた。

びゅっ

「わっ!」

その瞬間俺の顔のすぐ横をメスが掠めた。

「こっ、コノヤローそんなモン投げんな!」

「はっはっは、飛び道具ならコチラにも沢山あるのだよ。・・・美由紀君、メスを」

「ハイ、センセ♪」

看護婦がステンレスのトレイに沢山のメスを載せて医者の隣に立つ。

くそっ、運動能力では俺が勝っていても、武器の威力では相手が一枚上手か?

いや・・・待てよ。

俺は少し大きめの石を拾って看護婦目掛けて投げてみた。

ぽいっ

「きゃっ」

ガシャーン

石は狙い通り看護婦の持っていたトレイに当たり、メスは暗い地面へと散らばってしまった。

「はっはっはっ、どうだ参ったかー」

俺は勝ち誇った様に腰に手をあてて高笑いをした。

ガンッ

「いでっ」

拳大の石が俺の頭にヒットした。

「よくもやりやがったなこのクソジジイ!」

ぽいぽいぽいっ(←パイナップル爆弾三連射)

「私の仕事道具になんということをしてくれるのだ!」

ぽいぽいぽいっ(←医者の反撃)





「ハァハァハァ・・・」

「ゼェゼェゼェ・・・」

「君、卑怯ですぞ!美由紀君から手を離したまえ!」

「う、うるせえ!それ以上近づいたらこのねーちゃんにエロいことするぞ!」

「ああ・・センセ。私はどうなっても構いませんっ!」

「み、美由紀くんっ!」

いつまでも決着のつかない投石の応酬に業を煮やした俺は、ある作戦を思いついた。
一瞬の隙を突いて看護婦の背後を取り、拾ったメスを彼女の背中に突きつけ、医者と看護婦2人同時に動きを封じる・・・

名付けて「美人看護婦人質作戦」!!

・・・・・・・
悪役くさいとか言うな!
勝ちゃぁ良いんだ、勝ちゃぁ!(←悪役の常套句)

「あっ・・・嫌、ちょっと・・・?」

「ふふふふ」

もみもみもみ〜(←後ろからおっぱい鷲掴み)

「コラ、私は動いとらんぞ!」

「はっはっは〜、このくらいエロいことのうちに入ってないぜ!」(←立派に軽犯罪です)

「嫌ー、助けてぇセンセー!」

ああ、堪らん・・・ち●こ勃つ〜。

「くそっ、こうなったらアレをやる他ないな・・・」

「え?!センセまさかっ!」

えへへ〜、お尻の割れ目に擦り付けちゃおっと♪

「う・・・ぐぉぉ・・・がっ・・・はぁ・・あ・・・」

突然医者のオッサンは前屈みになって震えだした。

・・・もしかしてオッサンも勃った?
へへへ、なかなか若いねぇ〜。

と、俺がアホなことを考えている間に、医者の身体にはとんでもない異変が起こっていた。

ビリッ・・・ビリビリ

医者の身体は異様に膨れ上がり、着ていた白衣はたちまち千切れ飛んだ。

「へっ??」

破れた白衣の下からは茶色い体毛が現れ、医者の身体は更にムクムクと巨大化を続ける。

「うがあぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!」

最終的に熊をも超える程の巨躯となった医者は、夜空に向かって1つ大きく雄叫びをあげた。

「ななな・・
 何だーーー???」

「きゃー!センセ、素敵よー!」

医者のオッサンは変身ヒーローだったんですか??

「はっはっは!美由紀君、今助けるぞっ☆」

さあ、形勢逆転だ!と意気込む医者のオッサン。

・・・が、

「動くな」

俺はメスを看護婦の喉下にあてて、ドスの利いた声で脅した。

「え?」

気を削がれてその場に立ち尽くすオッサン。

「変身なんかしてみたところで状況には何の変わりも無いだろうが」

「ああっ、そう言えば確かにそうだ!!」(←馬鹿)

オーバーなアクションで頭を抱えて地面に跪くオッサン。

プチプチプチ

俺はメスを使って看護婦の白衣のボタンを1つずつ千切っていった。

「い・・嫌っ!」

白衣の下からピンク色の可愛らしいブラジャーが覗いた。

「仕方ない・・・・美由紀君!君も変身するのだ!!」

・・・は?何言ってるの?このオッサン。

「ハイ、分かりました。センセー!」

おい・・・ちょっと待てって・・・

「はぁぁぁぁ!」(←ライ○ー変身?)

うそだろ!?

俺の目の前にある彼女の髪がみるみるうちに伸び始めた。

「は・・・ぁぁ・・あああ」

ひっ!

今度は看護婦の白い肌が徐々に緑色に変色し、更に、衣服の上からでも分かる程筋肉が盛り上がってきた。

「わっとぁっ!」

俺はびっくりして看護婦の身体を突き飛ばした。
が、逆に俺の方がバランスを崩して尻餅をついてしまった。

「さーて、お遊びはここまでですかな?」

オッサンのバケモノが余裕の表情で俺を見下ろした。

「患者さん、オイタが過ぎたようね♪」

下半身が蛇の様な姿になった「元・看護婦」のバケモノも俺を見下ろしながらクスクスと笑っている。

やばい・・・
食われる。

俺がそう思って半ば覚悟を決めて目を閉じたときだった・・・

「やっと正体を現したわね。バケモノども!」

凛とした少女の声が闇を切り裂いて辺りに響き渡った。

「むっ・・・何者ですかっ!」

オッサンのバケモノが声のした方向を見る。

俺も慌てて目を見開いて声の主を捜した。

「あっ!お前は!!」

そこに居たのは俺が先ほどこの場所で出会った少女だった。

「ばっ馬鹿、お前・・・こいつらバケモノだぞっ!
 勝てるわけねーだろ、早く逃げろ!」

言いながら俺は暗闇へ向かって勢い良く走り出した。
少女がバケモノどもの注意を逸らしてくれたお陰で、俺は難無く逃れることができた。

「え?」

数十メートル程離れた茂みの中に身を隠し、再び振り返った俺は自分の目を疑った。

「・・・ふんっ」

ブンッ

ゴスッ

「ぎゃぁぁぁぁっ」

バキッ

ドンッ

「ひぃぃぃぃ」

なんと少女は鉄パイプ1本でバケモノどもを滅多打ちにしていたのだ。

「くそっ、何だこの娘は!?」

オッサンのバケモノが少女を見上げながら忌々しげに呻いた。

「私はお前達のようなバケモノを狩る者。
 さっきの男を使って様子を見ていたのよ」

・・・え?何?
どういうこと?

「近頃この村の付近で行方不明者が相次いでいたから、まさかと思って調べていたのよ。
 そしたらまぁ・・・案の定ってヤツね。
 最初にあの診療所を見たときからバケモノの匂いがプンプンしてたのだけど、
 たまたま丁度良い駒が見つかったもんで利用させてもらったわ」

ええーーー!?
何?俺あのガキにハメラレタ?もしかして。

ああっ、クソ!やっぱ、あんなガキの言うことなんか信用するんじゃなかったーぁぁぁ!
お陰で俺はフナムシや蟹に犯されるわ、人肉は食わされるわ・・・・

「うっぷ・・・」

やべ、思い出したらまた吐き気が・・・

そうして俺が1人ゲロと格闘している間にも、その直ぐ先では少女とバケモノどもが壮絶な戦いを繰り広げていた。

「うがぁぁぁぁああ!!」

ビュンッ

ズガガガガガ

男のバケモノが右腕を大きく振り回し地面を薙ぐ。
岩や木の切り株が根ごと掘り起こされる強烈な一撃だ。
しかし少女は跳躍してそれを軽々とかわす。

「これでもかっ!」

バケモノは少女の着地の瞬間を狙ってローリーングソバットの要領で尻尾を叩きつけた。

バシッ

「っ!」

咄嗟に左腕でブロックする少女。
が、踏ん張りが利かない為、少女の身体はそのまま横へと吹っ飛ばされてしまった。

ダンッ・・ゴロゴロゴロ

小さな身体が地面に打ち付けられ、派手に弾む。

「はははっ、思い知ったか!」

バケモノが「してやったり」と喜色ばむ。

が、少女は直ぐに体勢を立て直し、何事も無かったかの様に再びバケモノに攻撃を仕掛ける。

「ばっ、馬鹿な!!」

どうやら、素早くて怪力なだけでは無いらしい。
今の一撃で制服の裾は大きく裂けてしまったにも関わらず、少女の肌には傷らしい傷が見当たらない。

どっちもバケモノじゃん!

少女は破れたセーラー服を風にはためかせながら、2匹のバケモノを相手に華麗に舞い続けた。





少女とバケモノの壮絶な戦いが始まってから約15分が経過していた。

少女の圧倒的楽勝ペースに緊張が解けたのか、俺は完全に観戦モードに突入していた。

「おっ・・・もうちょいっ」(←応援)

「おおおー!?」(←パンチラ)

「そこだ、そこで大きく足を上げて・・・」(←エロオヤジモードに移行)

「・・・・・・・・・」

やべ・・・勃ってきた(←鳥肌です)

シコシコシコ・・・(←武者振るいです)

どぴゅっ(←・・・・汗?)

「ハァハァハァ・・・」

バケモノの攻撃が少女にヒットする度・・・
少女の顔が僅かに苦悶の表情を刻む度に俺は奇妙な興奮を感じていた。

はぁ・・・変態か?俺は。

「そうねぇ・・・やっぱり大きな病院でCTスキャンする必要があるわ」

「うわっっ!」

ふと見るといつの間にやら例の女のバケモノが俺の隣に立っていた。(←誰かー!猛獣が客席に入ってきましたよーっ!)

「うふふ・・・こんなところに隠れて何をしているのかしら?」

「いや・・・その、手に汗握って応援してたところです」

「ち●ちん握ってオ●ニーしてた・・・でしょ?」

「いやー、・・・ま、そうとも言います」

俺は全身にだらだら脂汗を掻きながら必死に強がってみせた。

「さぁ、コッチへいらっしゃい。さっきのお返しをしてあげるわ♪」

バケモノはニッコリと微笑んで俺の手を取った。

嫌、放して!馬鹿、アッチ行ってちょーだい!

女のバケモノはジタバタと暴れる俺を軽々と持ち上げると、茂みから出て、少女の目の前に立った。

「そこまでよっ、お嬢ちゃん」

その声に反応して少女とオッサンのバケモノが俺に注視する。

「おおっ・・でかしたぞ、美由紀君!」

「・・・・・・・」

「娘!・・・少しでも動けばこの男の命は無いわよ」

うひーっ、ありがちなパターン!
・・・じゃなくて、俺様絶体絶命の大ピーンチ!!

ズバッ

「ぐぎゃあああああああっ!!」

・・・へ?

少女は再びオッサンのバケモノをシバキ始めた。

おいおいおいっ、いいのか?いいのか?

「コラっ、ちょっと待ちなさいよ、この男がどうなっても良いっていうの?」

そーだ、そーだぁ、良くないぞぉ。

ビシッ、バシッ、ズゴォッ

「ぎゃっ、ぐおっ、ぐひいいいい・・・」

ああ・・・全然聞いてねぇ。

「この・・・っ!
 舐めるなー!!」

あ、キレましたよ・・・

ぶしゅーーーーーーーっ

キレタ、キレタ・・・喉が掻っ切れたー!

自分のものとは思えない程の勢いで噴出した真っ赤な噴水。

やべぇ・・・これは死ぬよ?(←多分ね)

「くそっ」

人質が効果無いと分かったバケモノは、俺を地面に放り捨て、再び戦いの輪に加わった。

「ぐはっ・・・」

熱い・・・熱い・・・
喉が焼けるように熱い。

一方身体の方は反対に指先からだんだんと冷たくなっていく。

意識が遠のく。
目の前が真っ暗だ・・・・

「がくっ」(←気絶の自己申告)





どくん・・

どくん・・

どくん・・

耳鳴りがする。

頭が破裂しそうな圧迫感を感じる。

どくん、どくん、どくん・・・

心臓の音がどんどん加速する。

まだそんなに血が残ってたっけ?

ああ、そうか・・・血の総量が少ないから回転が速くなってるのか。

ん?そういう理論が成り立つのか?

うーん、何か考えるのがめんどっちい。

てか、さっきから身体が無茶苦茶熱いんですが・・・

ああ、熱い、熱い、熱い熱い熱いっ!

「あちぃぃぃぃい゛い゛い゛!!!」

がばーーーっ

・・・・・・・・・・・・

その瞬間・・・俺は『覚醒』した。

なんだコレは?
視界に捕らえるもの全てが青白く光っている。
確か今は真夜中じゃなかったっけか?

月が出ている。
草木が見える。
熾烈な戦いを繰り広げる3つの影が見える。
・・・それぞれの顔の表情までハッキリと判別できる!

俺は奇妙な高揚感を感じながら戦場へと1歩踏み出した。

ズシャーーーッ

草が、石が飛び散る・・・地面が抉れた。

身体が異様に重たく感じる。
だがしかし、それを十分支えるだけのパワーも漲っている。

・・・殺したい。
・・・壊したい。
・・・犯したい。
形あるもの全てを破壊し尽したい!

俺の肉体は今戦いを求めているっ!!

「うおおおおおおおおーーーーっ!」

俺は吼えた。

森が震える程の・・地が避けんばかりの大音量。
先程のチンケなバケモノの雄叫び等比べ物にならない迫力だ。

当然そこに居た連中は俺の姿に目が釘付けになる。

「な・・・っ!」

例の少女も流石にこれには驚いたようだった。

「お、おおっ・・・撒いた種が芽を出しましたな!」

俺の姿を見たオッサンのバケモノが何やら嬉しそうに笑った。

「ふふふ・・・試しにこの男の身体に細工をしておいたんですよ。
 ・・・私達の仲間になるようにね」

はぁ?このオッサン何言ってんだ?
俺がお前等の仲間だとォ?

「余所者だって聞いたもんだからぁ〜、コレ幸い♪よねぇ〜。
 万が一失敗したって遠くに捨ててきちゃえばいいだけですもの♪」

・・・・・・・
てめぇら、どいつもこいつも俺様をコケにしやがって!!

「ふざけんなっ!」

ブンッ

俺は自分の背中に生えていた直径15cm程の触手をオッサン目掛けて叩きつけた。

「ぐへぁっ!」

ベシャァッ

オッサンは呆気なく触手のムチに叩き潰された。

「あ・・・あひぃ・・・」

む・・まだ生きてやがる。
案外しぶといな。

「・・・・うそ、なんで?なんでコイツ私達に逆らうの??」

「お前も逃げんじゃねーゾ!」

ベシッ

「きゃあっ」

数本の触手が伸び、女のバケモノを捕まえる。

グニグニグニ・・・

「ぎっ・・ひいぃ」

触手は更に枝分かれし、伸び、バケモノの身体に絡みついて動きを封じた。

「さーて、お次はてめーの番だぜぇっ」

俺は少女に向き直った。

「そういやぁ、まだ名前も聞いてなかったよなぁ?」

「お前に名乗る名前なんかないわよ。バケモノ」

「ぬわんだとぉぉっ?!
 誰の所為でこんな姿になったと思ってんだっ!!」

「そこでノビてるお仲間さん」

そりゃま、確かにそうだけど・・・

「テメーがあんなバケモノが経営してるトコなんか紹介しなけりゃ、俺はこんな目に遭わずに済んだんだよ!」

「貴方が間抜けなだけでしょ?」

うがーーーーーーーっ!!!
もう許さんっ!!完全にブチキレた!

「ブッコロシテヤル!!」

「望むところよ!」

ブオンッ

怒りに任せて振り回した触手が空を斬る。

・・・トン

少女がスカートをなびかせて俺の肩にフワリと舞い降りた。

「こっ・・このぉっ!」

捕まえようと腕を伸ばすよりも早く、少女の持つ鉄パイプが俺の顔面を襲った。

ガキンッ

「がはっ」

俺の鼻っ柱に鉄パイプがめり込んだ。

「ぐ・・・ぐおっ」

カラン・・・

鉄パイプが「く」の字に折れて足元に転がる。

いかん、頭がくらくらする。
なんつー馬鹿力だ、この女。

・・・が、しかし、これで得物は無くなったぞ?

シュルンッ

「くっ!」

俺がフラフラしていたので油断したのだろうか。
少女は俺が地面に伸ばしておいた細い触手に気付かなかったようだ。
触手はがっちりと足首に巻きつき、少女の動きを封じた。

「ひゃはははは・・・
 嬲り殺しにしてやるぜぇっ!」

ざわざわざわ・・・

俺は全身に生えた無数の触手を総動員して少女の身体を拘束した。

右腕と左腕に1本ずつ。
それから右の足首に1本。
膝から太股にかけてはナメクジのようなヤツが螺旋状に巻きついている。
更に毛糸程の細い触手がイソギンチャクの様に少女の指に絡みつき、絶え間なくウネウネと動いている。
また、首にはタコの足の様なイボイボの付いた太い触手が巻かれ、自由に首が回らないようにしてある。

それらの触手にぐっと力を入れてやると少女の身体は軽々と中に浮いた。

それはまるで蜘蛛の巣に掛かった蝶の様であった。
そう、あとは食べられるのを待つだけ・・・

「ひひひひ・・・どうだ、参ったか?」

「・・・」

しかし少女は相変わらず顔色ひとつ変えることは無かった。

ふん・・・まあいいさ。

「ところで・・・
 俺様はさっき名前を聞いたんだけどなぁ」

「・・・」

「なんで教えてくれないのかな?」

そう言いながら俺は、少女の有るか無いかという程度のささやかな胸に手を伸ばす。

ぐいっ

「くうっ!」

ぐぐぐっ

力を入れて無理矢理に胸の肉を掴む。

「ひぐぅぅぅっ!」

初めて少女の顔に明らかな苦渋の色が浮かんだ。

「へっへっへ・・・」

手を離し制服の裾を捲って見てみると、掴んでいた辺りの皮膚が赤くなっていた。

あれで皮下出血程度か・・・

「もう1回聞くぜ?名前は何だ?」

俺は少女の耳元で囁きながら、烏の嘴程もある巨大な爪を少女の柔らかい腹に突き立てた。

ぐ・・・ぐぐぐっ

少しずつ指先に力を込めてゆく。

「は・・・ぁぁあ・・・」

少女の顔から明らかに血の気が引いてゆく。

「・・・・く・・・るめ」

「はァ?良く聞こえねえよっ、なんだって?」

爪が徐々に腹にめり込んでゆく。
腹の皮がプッツリと裂けるのも時間の問題だろう。

「くるめ・・・平坂久留女よ!」

はっははー♪
とうとう折れたな?

「そうかそうか、くるめちゃんか。
 変わった名前だねー」

「ど・・どうでもいいでしょ、そんなことっ」

くっくっく・・・
明らかに動揺してるぜ。

「でさァ・・・くるめちゃんよ。
 さっき俺が人質に取られたとき、どうして見捨てたのかな?」

「・・・・・・・」

「死んだらどうすんだよっ!!」

「・・・・ぴんぴんしてんじゃないの」

「痛かったんだよ、死ぬかと思ったんだよ、怖かったんだよっ!!!」

「・・・・・・」

「血がぴゅーぴゅー出てさァ。
 ・・・自分の血だぜ?自分の。
 これだけ出たら死んじゃうんじゃないかなァ?
 ーって思うくらいの量の、その何倍もの量が噴き出していくんだぜ!?」

「・・・・・・」

「なァ、ゴメンナサイの一言くらいあってもいいんじゃねぇか?ああっ?!」

俺の怒りのボルテージに合わせ、少女の身体に巻きついている触手がぶくっと体積を増す。

ギチギチギチ・・・

その分だけ更に締め付けがキツくなる。

「ぐっ・・・くぅ・・・」

首が締め上げられ、徐々に少女の顔が鬱血してくる。
丹精な造りをしていた少女の顔が見る見るトマトのように変わってゆく。

ぱっ

落ちる1歩手前で力を緩める。

「げはっ!・・・ごほっ・・・かっ・・・は・・・ぁ」

少女は激しく咳き込み、口の端から涎を垂らしながらぜぇぜぇと荒い息をついた。
が、俺は間髪置かず、今度はその口目掛けて一際グロテスクな形をした触手を捩じ込んでやった。

「うぐっ!・・・ほう゛ぅぅぅっ!!」

「へへへ、どうだ?その触手は?
 ち●ぽにソックリだろう?」

「うううっ、んんーー、んんんーっ!!」

「ああ?それともち●ぽなんか見たこと無いってか?
 よし、それなら特別に俺様のビッグなち●ちんを拝ませてやるぜっ!」

「んんんっ・・・んんんーっ!」

ぽろーん(←Myち●こ登場)

ちっ、なんだ、ココのサイズは前と変わってねーじゃねぇか。(←身体のサイズに比べると嫌にしょぼく見える)

「んーーーっ!!!」

少女は目をぎゅっと瞑って下を向いた。

「ん?
 ・・・・何?もしかしてコレ見るのが恥ずかしいの?」

おおっとー、これは意外。
ふふふ・・・実はエッチには免疫が無いようだねぇ。

俺は面白がって自分のち●ぽを少女の股の内側に擦り付けた。

「んっ?!・・・んーっ、んーんー!」

一瞬何かと思って目を見開いた少女は、自分の身体に俺のち●ぽが触れているのを知って、激しく暴れ始めた。
しかし少女の身体を固定している大小様々な触手は、ブンブンとしなるだけで、解ける気配が全く無い。

「へっへっへ・・・
 何を今更これくらいで恥ずかしがってんだよ」

俺は少女の股間に手を沿え、敏感な部分を指でなぞった。

「ひはぁっ!」

少女の身体がビクンと跳ねる。

パンティーの上から割れ目をなぞり、敏感な突起の部分で指先にバイブレーションを加える。

「はっ・・・んん・・・・くはぁ・・・」

ふへへへへ。
このシチュエーション・・・堪らんっ♪

「よーし、もう我慢できねぇ、入れるぞぉ!」

「ん?!んぐーーーっ!!!」

俺は少女のパンティーの股の部分に爪を引っ掛け、横にずらして性器を露出させるた。
少女のそこは当然濡れてなどいない。
しかし俺にとってそんなことは関係ない。
あとは割れ目に向かってモノを突き立てるのみ!

「おおお・・・とりゃぁっ!」(←気合の掛け声)

俺は「竿よ折れよ!」と言わんばかりの勢いで腰を突き出した。

「ああああああああーーーーっ!!!」

少女が声にならない悲鳴を上げる。

「へへへ・・・お前のことだから処女膜まで鉄板みたいに硬いのかと思ったら、意外と歯ごたえが無かったな?」

「ん・・・・んぐうっ」

少女は目からポロポロと涙を零していた。

「さーて、それじゃ早速動かせてもらいますかぁ」

とは言っても俺はただ突っ立っているだけ。
少女に巻きつけた触手を上下に震動させるのでいいのだ。(←楽ちん楽ちん♪)

「はぐっ・・・・んっ・・・・かはっ・・・」

くっ・・
少々激しすぎるかも・・しれない・・・
が、これがまた・・・・イイ!!

ズッコ、ズッコ、ズッコ・・・

濡れていないアソコの肉が俺のモノに引き摺られて身体の中に入ったり外へ引きずり出されたりする。

「あがぁっ・・・はっ・・・・かふっ・・・ぉあ!」

おそらく少女は痛みしか感じていないだろう・・・
しかし、そのことが俺を更なる高みへと誘う。

「くっ・・・ふっ・・・出すぞ・・・出すぞっ・・・くっ、出る!!」

どくっ・・どく・・どくっ

俺は少女の膣内にありったけの精を放った。
そして俺の射精に連動して、少女の口に入っていた触手の先からも液体が迸る。

「けはっ、げっ・・・ごほっ!!」

触手は蛇口を思いっきり開いたホースのように、謎の液体を撒き散らしながら狂ったように首を振り回した。

ビシャァッ・・ビチャ・・・ピュルルル・・・

「あっ・・く、ぷはっ・・・ぶっ・・・」

少女は顔は勿論のこと、身体全体にその謎の液体を浴び、破れた制服もろともドロドロに汚されていった。

「ハァハァハァハァ・・・・」

今までに感じたことが無い程の快感と脱力感が俺の身体を襲っていた。
絶頂感が今だに後を引いている・・・・頭が真っ白になってしまいそうだ。
・・・身体の感覚が徐々に無くなっていく。
やばい・・・マジで意識が・・・・





はっ!
寝ちまった!!

俺は慌てて身体を起こした。

「・・・あ」

俺の目の前に2本の足が・・・

見上げるとそこに少女の顔があった。
・・・確か久留女という名前の少女。

「や・・・やァ」

俺は上目遣いに少女の様子を伺いながら、へらへらと愛想笑を浮かべつつ挨拶をしてみた。

「・・・・・・・・」

少女は冷たい目で俺を見下ろす。

・・・・・・
あれ?そう言えば俺の身体・・・

「おっ!・・・元に戻ってる!」

俺は自分の手のひらをマジマジと見詰めた。
それから足、背中・・・奇妙な触手のようなモノも見当たらない。
なんか良く分からんが元に戻ってるぅっ♪

「あ!そうだ、アイツ等は?」

あの医者と看護婦のバケモノはっ!?
確かまだトドメを刺してなかった筈。

「逃がしたわ・・・・」

「えっ??なんでっ・・・」

「何言ってるのよ・・・貴方の所為でしょ?」

うっ・・・そうだったか。

「どうするんだ?」

「勿論、追って始末するわ」

「そ・・・そうか、じゃぁ後は君に任せる!ウン、そいじゃっ!」

バッ

俺は素早く立ち上がるとクルッと踵を返した。

「待ちなさいよ」

きゅっ

「おげっ」

少女が俺の襟首を掴んで引っ張った。

「げほげほっ
 ・・・・ナンデショウカ?」

俺は苦笑いを浮かべながら振り向いた。

「奴等の他にも始末しなきゃぁならないのが居るんだけど・・・」

「ほ・・ほう・・・」

嫌な予感・・・

「貴方よ・・・貴方」

「おお・・俺ですかぁっ??」

うわぁっ・・やっぱりぃ!!

「いや、でもでもっ・・・ほら、もう元通りの姿じゃんっ?」

俺は慌ててアピールして見せた。

「・・・・・・・・
 普通の人間がそんな身体でぴんぴんしてる訳がないでしょう?」

「・・・え?」

俺は改めて自分の身体を確認する。

「げっ!」

良く見れば首はパックリと裂け、呼吸をする度にヒューヒューと空気が漏れている。
腹は内臓だか骨だかがぐっちゃぐちゃに混ざった相変わらずのドクドク状態。

・・・あ、でも、急速に傷口は塞がりつつあるような気もするし・・・
って、それこそが異常なことなのかぁ?!

「さて・・・それじゃぁ、アタシとしては今ここで貴方に死んでもらいたいのだけど」

少女は腰に手をあてて俺に話しかける。

「い・・・・
 いやだプー!」

言うや否や、俺は少女に背を向けて全速力で走り出した。

「・・・・・!!」

嫌ぁーっ、無言で追っかけて来るーーーっ!!
怖いよぉぉぉ!!!

結局、その晩の追いかけっこは夜が明けるまで続いた。





まぁ、その後も色々あったわけなんですが、今はこうして立派に闇の世界で生きてます♪

ああ、あとこれは余談だけど、実は今でもその気になればアノ触手のバケモノの姿になることができるんだよね。
ただ、どうやら射精をすると元の姿に戻ってしまうらしいということが分かった。(←あれから度々女を襲っている)
それでもまぁ、並のヤツに負ける気はしないけど・・・
でもあの久留女とかいう少女にだけは気を付けなければいけないなぁ。
なんせアイツ、未だにしつこく俺のことを追ってやがるから・・・

・・・・・・・
てか、俺はいつか人間に戻ることができるのか?

うーん・・・なんか性格が日増しに邪悪になっていってるような気もするんですけど・・・
良いのかしら?これで。

・・・ま、いっか。



END



あとがき
「新感覚伝奇ホラー小説」第1話(風味)w
お楽しみいただけたでしょうか?

僕としては今回エッチシーンがちょっとオザナリになってしまった感があって後悔してます。(汗)
と言うか、寧ろエロ無しでも良かったかな〜?っと(苦笑)

ま、これからも暇を見て参加しますので、皆さん応援よろしくお願いしまーす♪

ではまた。