うちの姉ちゃんのばあい
(又は弟のばあい)

作・ゆーすけ


「松蔵爺ちゃんがあの世でマツてるゾー?・・・なんてなー♪」

晴枝が趣味の悪い駄洒落を言って祖母をからかう。

「やめなさいっ!晴枝!」

すかさず母が注意するものの、晴枝は全く気に止める様子が無い。
因みに『松蔵爺ちゃん』とは晴枝の祖父の名で、既に他界している。

晴枝は腰に手をあてて立ち上がると、肩に掛かった茶色い髪をこれ見よがしに掻き揚げて「ふんっ」と鼻を鳴らした。
それを見て祖母は元々皺だらけの顔をより一層皺くちゃにして怒りを露にする。
美夫はそんな祖母の顔を見て「梅干」を連想していた。

(やべ・・梅干想像したら唾が出てきた)

しかし流石に祖母の顔をおかずにご飯を食べる気にはならなかった。
それどころか逆に食欲が失せる。

今晩の喧嘩の原因は姉『晴枝』の髪のことだった。
祖母にとっては姉がいい歳をしてちゃらちゃらと髪を茶色く染めているのが気に食わないらしい。
『いい歳』と言ってもまだ20歳そこそこであるのだが。
ま、早い話が難癖をつけているだけなのだ。

「お?そんなに怒ると血管がブチっと行くぞー?ブチっと」

尚も祖母を挑発しゲラゲラと笑う晴枝。

「・・・ごちそーさまー」

美夫は丁度食欲も無くなったことだしと、要らぬ『とばっちり』を受ける前にさっさと席を立つことにした。

「晴枝ぇぇ!!」

美夫が居間を出ると同時に祖母の怒声が上がった。
これからまた大喧嘩が始まる。
こうなると早くても1時間は収まらないことを美夫は過去の経験から知っていた。
『我関セズ』
それがこの家で上手に暮す最善の方法なのだ。
美夫は居間の喧騒を尻目に1人自分の部屋がある二階へと向かった。

階段を上がると手前の部屋が美夫の部屋だ。
その向こうにあるのが2年前まで・・そして去年から再びそうなった『姉の部屋』である。
美夫はそこでふと夕方姉が漫画雑誌を買って帰ってきていたことを思い出した。

(そうだ、漫画でも読んで時間を潰そう)

美夫は自分の部屋のドアの前を通り過ぎ姉の部屋のドアを開けた。

姉の部屋は2年前といくらも変わっていなかった。
違いがあるとすればベッドの上に脱ぎ散らかしているのがセーラー服ではなくスーツになっているという程度だ。

(あれ?・・・・無いなぁ)

テーブルの上にでも置いてあるかと思っていたのだが、それらしいものは無かった。
床にもベッドの上にもない。

美夫は雑誌を探して暫く姉の部屋をウロウロと歩き回った。

(ちぇっ、何処にもねーや)

当てが外れてちょっと機嫌が悪くなった美夫は乱暴に背中からベッドに倒れこんだ。

(あーあ、しかし姉ちゃんもよく毎晩懲りずに喧嘩するよなぁ)

美夫はぼんやりと天井を見上げながら姉のことを考えた。





美夫の姉『晴枝』は2年前の春、高校を卒業するとすぐに当時付き合っていた彼氏『鳴埼健一』と結婚した。
その時に猛反対したのが祖母だった。

美夫の父親はもう随分前に病気で他界している。
祖父に至っては父親が幼い頃に既に離婚していた為、美夫は顔さえ知らない。
だからこの家では祖母が最も力を持っている。
普通に順位付けをするなら「祖母>母>晴枝>美夫」が妥当と言えよう。
が、実際には祖母に気に入られている美夫と、嫌われている晴枝が逆転し
「祖母>弟>母>姉」となる。
その祖母に反対された姉は、半ば追い出されるようにこの家を後にしたのだった。
ところが2年もしない間にその姉が夫と喧嘩をして舞い戻って来たのだから
「そら見たことか」
と、祖母の鼻息も荒くなるというものだ。

で、一方の姉はというと・・・
これまた周りのことなど全く気にしない性格で、何時でも何処でも自分のやりたいようにやる。
まぁそんな家庭環境であるから、美夫も相当のストレスを抱えて生活しなければならなかったのである。

「毎日仕事して、家帰ってきてからは婆ちゃんと喧嘩・・・」

(まぁ、よく体力がもつもんだねぇ)

美夫はそんなことを考えながらゴロンと寝返りをうった。

(アレ?・・・・・・・・これ、姉ちゃんのスーツ)

寝返りをうったその鼻先に偶然姉の脱ぎ捨てたスーツがあった。

くん・・・

スカートの生地の匂いと香水の匂いが混じった独特の匂いが美夫の鼻をくすぐった。

(姉ちゃんが今日1日穿いたスカート・・・か)

美夫はそのときあまり深く考えることも無く、何気なくそのスカートを手に取っていた。

(へぇ・・・スーツってこういう肌触りなんだ)

美夫はスカートの表の生地や、スベスベした裏地などに手を這わせてその感触を味わった。
そしてふと

(姉ちゃんの汗の匂いってどんなだろう?)

そんなことを思って顔をスカートの裏地に押し付けた。

すーーっ

「・・・・・・」

別にどうということはなかった。
微かにすっぱいような匂い・・・普通の汗の匂いだ。
が、そうするうちに不思議と心臓が高鳴ってゆくのを美夫は感じていた。

美夫は所謂『オクテ』と言うやつだった。
家庭環境の所為もあってか、少々女性に対して臆病になっている部分もあるのかもしれない。
が、姉に対しては特別悪い印象を持っているというわけでもなかった。
いや寧ろ血縁を超えた特別な感情さえ感じることも度々あった。
流石に普段本人を前にすると、苛められたり姉弟喧嘩をしたりしたときの記憶が蘇って、
素直に女性を意識することはできない。
だが、時にふと、
短パンの裾から覗くスラリと伸びた形の良い太股や、
風呂場の擦りガラス越しに見える魅惑的なシルエット等に欲情することがある。

過去に一度、美夫は晴枝の脱いだ下着をこっそり拝借して、それをネタに自慰をしたことがあった。
流石にそのときそばかりは美夫も自分の愚かさを悔いたものだった。
しかし晴枝が結婚して家を出てからは、美夫の姉に対する特別な感情というものは若干薄れてきていた。





階下からはまだ喧しく言い争う声が聞こえてくる。
まだ当分は収まりそうにない。

美夫はふと、自分の手に持っている『スカート』に激しく興味を惹かれた。
そして美夫はベッドに腰掛けたまま、そのスカートに足を通してみた。

スカートの裾からにょきっと出た脛毛だらけの足。
テレビのコントでお笑い芸人が女装している姿を思い出した。

が、多少毛深いことを除けば美夫の足は意外と女性のそれと比べても遜色がない程に美しかった。
・・・少なくともそのときの美夫の目にはそう映っていた。

(俺ってもしかしたら女の子の服とか結構似合うんじゃないか?)

妙な好奇心に駆り立てられた美夫は、ベッドから立ち上がると今度は晴枝の洋服ダンスを漁り始めた。
タンスの上の方に並んだ小さ目の引き出しを開けると早速色とりどりのパンティーが現れた。
しかしテカテカした派手な色合いのものや、レースや刺繍の入った大人っぽいものばかりで、
それは美夫の感性には今ひとつしっくり来なかった。
が、一番隅の引き出しを開けたとき美夫の目がきらきらと輝きを放った。
純白の可愛らしいパンティーがくるくるっと丸めてプラスティックのトレイの中に
1つずつ区分けされて並べられている。

おそらくは晴枝が学生の時に主に穿いていたものだろう。
美夫は自分の穿いていたズボンとトランクスを急いで脱ぎ捨てると、
興奮に胸を高鳴らせながらゆっくりと噛み締めるように、その小さな純白のパンティーに足を通していった。

はじめ「ちょっときついかな?」と思っていたが、穿いてみるとそれは意外に伸縮することが分かった。
股間のモノも何とか収めつつ、パンティーの紐を腰の辺りまでクイっとあげると、
流石に生地は限界くらいまで伸びきってしまった。
それでも一応、穿いて歩ける程度には問題無いようだった。

さて、ここまできたらもう好奇心は止めようが無い。
美夫はシャツを脱ぐと今度はブラジャーを手に取る。
後ろで止めるタイプのものだったが、美夫はそれを一度前後逆さまにつけ、
胸の前でホックを止めてからくるっと一回転させた。
以前姉がそうしてつけているのを見て知っていたからだ。

そしてふと胸のカップのところに視線を落とすと、やはり何かが物足りない。
晴枝はあれで結構胸が大きいのだ。
美夫はテーブルの上に置いてあったティッシュペーパーをざんざか引っ張り出しては胸のカップに詰めていった。
そして最後にポンポンと上から手で叩いて形を整えた。

下着に身を包んだ美夫は、姿鏡の前に立って自分の姿を確認した。
プロポーションは悪くない。
肌も白く肌理が細かくてなかなかのものだ。
ただ自分の顔が映るとどうしても興覚めしてしまう。
美夫は更に何か無いかと姉のクローゼットを漁った。
すると何故か金髪のカツラが出て来た。

(よしっ!コレはいける!)

カツラを被って前髪で顔を隠すと、もう自分でも誰だか分からなかった。

暫く鏡の前でクネクネとポーズをとって遊んでいた美夫だったが、はっと気付いて再び服の物色を再開した。
今度のターゲットはタンスの下の方の引き出しだ。

(あった!)

これまた色んな色のストッキングが出て来た。

(ベージュはオバハン臭いな・・・)

(ん?・・・・おおっ、コレ良さそう♪)

美夫が取り出したのは若干白っぽい色のついたストッキングだった。
美夫は白ストッキングを装着し、満足げにその足を撫でた。
ストッキングのスベスベした肌触りと、足を締め付ける心地よい圧迫感が寄り一層美夫の思考能力を奪っていった。

さて、次はこの上に着る物だ。

「どうせなら飛び切りインパクトの強いのがいいなぁ・・・」

金髪のカツラに白のストッキングだけでも十分奇抜だったが、本人に自覚は無い。
美夫は鼻歌混じりにクローゼットを覗き込んだ。
暫く中のものを手でゴソゴソと引っかき回していると、一番奥になにやら派手な色の衣装が見えた。
明らかに他の服とは違うタイプの服。
美夫はその服を注意深くクローゼットの奥から引きずり出した。

「うわ・・・・」

美夫はその服を目の前にして暫し唖然とした。
ワンピースのサマードレスだったが、スカートの部分は裾が短くヒラヒラと大きく膨らんだようになっていた。
まるで一昔前のアイドルがステージ衣装で着ていたような派手なものだった。
まあ、着る人が着ればそれなりに『可愛らしい』雰囲気にはなるだろう。
だがどう考えて晴枝には似合わない。
実際、晴枝がこれを着ている場面は一度も見たことが無い。

一体何のために?

「謎だ」

ドレスを両手に持ったまま小首を傾げていると、背後から声がした。

「アンタの方がよっぽどナゾよ」

振り返るとそこには腰に手をあてて顔をしかめた晴枝が立っていた。





「なにやってんのよ、このガキ!」

激昂した晴枝が美夫の背中に容赦なく蹴りをいれる。

「ぐぁぁぁぁーっ!」

美夫は無様に床に倒れて痛みに転げまわる。

「や・・やめて、姉ちゃん。俺が悪かったから・・謝る・・・」

美夫は必死で許しを請うが晴枝は聞く耳を持たない。
まるで汚い物でも見るかのように見下ろしながら蹴りの雨を降らす。

「痛い、痛い・・・ちょ、マジで痛いって、姉ちゃん!」

「うっさいわね、この変態ヤロー!気安く姉ちゃんなんて呼ぶなっつーの!」

ごろごろと床の上を転がって逃げる美夫の尻をサッカーボールのように蹴飛ばす。

「ぁあっ!気持ち悪ぅ!!
 なに、コレ?胸にティッシュなんか詰めちゃって!雰囲気出してるつもり?頭おかしいんじゃない?!」

どかっ

「変態だ、変態!姉の下着着けて興奮するなんてサイアクよ、アンタ」

「ね、姉ちゃん、とにかく落ち着い・・・てっ」

「うるさい、死ね!」

どかっ

「ぐはぁっ
 ・・・あんまり暴れると・・か、母さんが上がってく・・・」

「はぁ?母さんに見られて困るのはアンタでしょ?」

「うっっ!」

確かに・・・こんなところを見られたら最後、美夫の立場は『祖母>母>姉>超えられない壁>美夫=変態』
となってしまう。
それだけはなんとしても避けたかった。

「わっ、わっ・・・待って、姉ちゃん、それだけはっ・・・」

涙目で訴える美夫。
晴枝のはひとしきり暴れてぜぇぜぇと息を切らせていた。
そして一呼吸置いた晴枝はあることを思いついた。

「美夫・・・アンタ私の言うことを一つだけ聞いたら黙っててやっても良いわよ」

「え?ほんと?うんうんっ、なんでもきくよ!」

その言葉に美夫はすがりついた。
そして晴枝は足元の美夫を見下ろして一言こう言った。

「散歩」

「は?」

美夫は間の抜けた顔で聞き返した。

「だから・・・散歩よ。散歩。
 散歩に付き合いなさいって言ってるの」

「え・・・と。それだけ?」

あまりにどうってことのない条件だったので、美夫は少し拍子抜けした。
が・・・

「ただし・・・そのドレスを着て・・ね」

「ええーーーーーっ!!」

そのときの美夫の目には晴枝が『悪魔』そのものに映っていた。





美夫は晴枝に手を引かれて階段を下りた。

「あら、どこか出かけるの?」

階段を降りる音を聞いた母親が居間から声を掛けてきた。

「うん、ちょっと散歩」

「気をつけるのよ?」

「へいへい」

母親は廊下に顔を出しはしなかったが、美夫の心臓は今にも飛び出しそうな程にドキドキしていた。

コッソリと玄関で靴を履いて家を出る二人。

「姉ちゃん・・・靴キツイよ」

「うっさいわね、我慢しなさいよ」

わざわざご丁寧に靴まで女物を履かされる美夫。

「ほらグズグズしてんじゃないよっ!さっさと行くわよ」

「マ・・マジでこの格好で外歩くのかよ・・・」

「大丈夫よ。こんな暗いんだから誰も気付きゃしないって」

晴枝はそう言って嫌がる美夫の背中をドンと押した。

「うわわっ・・・」

仕方なく美夫は姉の散歩に付き合うことにした。





夜8時を過ぎた住宅街には人気は殆ど無かった。
それでも時々会社帰りのサラリーマン風のオヤジが二人の近くを通り過ぎることがある。
美夫は周りにちらちらと視線を向けるが、歩いている人と目が合いそうになると慌てて下を向く。

冷たい夜風が美夫の太股を撫でた。

「・・・ん」

なんとなく下腹部がもぞもぞとしてくる。

(なんだろう・・・なんか・・変な気分になってきちゃう・・・)

晴枝はそうやってモジモジしている美夫の姿を楽しそうに眺めていた。

と、突然晴枝の手が美夫の股間に伸びた。

「え?!」

虚を突かれた美夫はその手から逃れるのが一瞬遅れた。

「うわっ、何するんだよ姉ちゃん!!」

晴枝の手は美夫の男性自身をしっかりと捕まえた。

「馬鹿、止めろって・・・放せ、放せよ!」

美夫は慌てて晴枝の手を振り解こうとするが、大事な部分を握られている為強くは抵抗できない。
そして晴枝はというと、そんな美夫の様子を見て嬉しそうにこんなことを言う。

「あれー?美夫、コレ勃起してない?」

「う゛っ・・・」

確かに美夫のソレは勃起していた。
自分でもその事実に戸惑っていた美夫は言葉に詰まってしまう。
晴枝はニタニタと嫌らしい笑みを浮かべながら畳み掛ける。

「ほら、どうしたのよ?
 女物の服着て外歩いて興奮した?」

「ち、違うよ・・・俺のは普段からこのサイズなんだよ!」

返す言葉に窮した美夫は無理のある言い訳をする。
が・・・

「ほぉ・・・んじゃ、勃起したらもっと凄いことになるんだぁ♪」

晴枝は一枚も二枚も上手だった。

「わっ、ちょ・・やめっ・・・!」

晴枝は慣れた手つきで美夫のソレを手の中で転がし始めた。

「わぁぁぁっ!」

美夫は悲鳴を上げてその場にしゃがみ込んだ。

「コラコラ、こんなところでしゃがんだら人が怪しむわよ?」

はっとなって顔を上げ、辺りを見回す美夫。
・・・幸いなことに周りには二人以外誰も居なかった。
しかし晴枝に手を緩める気配は無い。

「ほら、立ちなさい。公園に着いたら止めてあげるから」

公園といったら小学校の隣にある児童公園のことだ。
ここからだと大体10分程の距離になる。

「うう・・・」

渋々立ち上がる美夫。
晴枝はその公園に着くまで美夫の股間を弄り続けるつもりだろうか?

晴枝は立ち上がった美夫の肩を抱くと、片手を美夫の股間に這わせたまま再び歩き始めた。
美夫は顔を真っ赤にしながら、おぼつかない足取りで姉についてゆく。





「・・・ん?」

サラリーマン風のオヤジがすれ違いざまに二人の様子をジロジロと見た。

「や・・やばいよ、姉ちゃん。あのオッサン俺たちのこと見てるよ」

その男は別に美夫が女装していることに気付いたわけではなかった。
ただ、こんな時間に女の子が二人・・・それも片方はいかにも場違いな感じのドレスなど着ていたものだから、どういう関係なのかと訝しく思ったのだった。

「おらーっ!おっさん何見てんだよ!ああん?」

晴枝は男に向かって啖呵を切った。
まるで昔のドラマに出てくる『スケ番』のような迫力だ。

「狩るゾ!!」

「ひっ!」

晴枝の「本当にやりかねない」ような雰囲気に恐れをなした男は、鞄を抱えて一目散に闇の中へと消えていった。
美夫はそんな晴枝の行動を素直に喜ぶことはできなかったが、男を追い払ってくれたことには素直に感謝した。

人が来たときばかりは流石に晴枝の手は美夫の股間から離れる。
が、2人っきりになるとすぐまた股間に戻ってくる。

「あらぁ?・・・なんかさっきより小さくなってない?」

通行人に気付かれないかと緊張していた為、美夫のソレは若干萎えていた。
しかし晴枝のしなやかな指に触れた途端再び硬度を増し始める。

「こんなのは・・・どう?」

晴枝はスカートの生地で美夫のモノを包み込んで手をシュッシュと上下にスライドさせた。

「ひっ・・・あ、ダメ・・・それ・・!」

スベスベとした肌触りの良い布が、熱く火照った美夫の性器を優しく包み込む。
晴枝の愛撫は強過ぎず弱過ぎず、緩やかな快感を絶えず美夫の脳に送り続けた。
このまま達してしまうわけにはいかない・・・
それはではあまりにも切な過ぎる。
かといって、ずっとこの『生殺し』状態を続けられることも美夫には耐え難い苦痛だった。

「はぁはぁ・・はぁ」

美夫の足はもうカタカタと振るえ、今にも腰が砕けてしまいそうだった。
と、そのとき

「着いたわよ」

急に晴枝の手が離れた。

「はっ・・・」

美夫はほっと息を吐いた。
が、それと同時に「イけなかった」ことにがっかりした気持ちもあった。

「ふふ・・・ま、良く頑張ったわ」

ぽんっと晴枝が美夫の肩を叩いた。

「!」

ビクッと身体を硬くさせる美夫。

「嫌ねぇ・・・もう何もしないわよ。
 だからそんな怖がんなっつーの」

散々美夫を苛めて気が済んだのか、晴枝は機嫌良くケラケラと笑った。

「ちょっとそこのベンチで休んでいこうか?」

晴枝が妙に優しい調子で声を掛けた。

「・・・うん」

美夫は緊張の糸が切れたのか、崩れるようにベンチに腰を下ろした。

「ジュース買って来るわ。アンタちょっとここで待ってな」

晴枝はそう言うと美夫をベンチに残して公園を出て行ってしまった。

「え?・・ちょっと待ってよ姉ちゃん!」

しかし何処へ行ったのか、もう晴枝の姿は見えなくなってしまっていた。
仕方なく美夫はベンチで姉の帰りを待つことにした。





暫く待ったが晴枝は帰ってこなかった。
徐々に美夫の胸に不安が広がってゆく。

もしかして自分を置いて一人帰ってしまったのではないだろうか?
あの姉なら在り得る・・・そう思い、自分も帰ろうかと腰を上げた。
しかし・・・

「・・・・・・・」

公園の入り口に目をやり、暫くして美夫は再びベンチに腰を下ろした。

自分一人で道を歩いていて、もしも知った人なんかに出くわしたらどうしようか?
そんなことを考えると怖くてしょうがない。
姉はあんなだが、いざというときには頼りになる。
先刻もサラリーマンのオヤジを追っ払ってくれたばかりだ。
自分一人の場合はどうだろう?
相手が普通のオッサンだったらまだ良い。
顔を伏せてやり過ごせばなんとかなるだろう。
だが、万が一相手がしつこく絡んできたりでもしたらどうすれば良いのだろう?
はっきり言って自分一人ではどうすることもできない。
それで最終的には男だということがバレたりして・・・
そんな最悪の展開ばかり想像して結局美夫は一歩も公園を出ることができなかった。

(あ・・アレ?なんか向こうの暗がりに誰か居ないか?)

ふと公園の隅の茂みに人が居る様な気がして美夫は目を凝らした。
美夫の居るベンチは街灯に照らされていて結構明るい。
だがそれは、ちょうどそこだけスポットライトが当てられているようなものだ。
美夫の位置からは街灯の無い茂みの暗がりなどはいくら目を凝らしてみてもよくわからない。

急に自分が沢山の人に見られているような気がしてきた。
暗がりの中から自分のこの恥ずかしい姿をじっと見詰める沢山の目。
姿無き視線に犯される恐怖に、美夫は居ても立っても居られなくなった。
美夫はベンチから立ち上がって辺りをウロウロしてみたり
街灯の傍から離れて辺りの様子を伺ってみたりと、忙しく歩き回った。
が、そうしていても不安は募るばかりで、一向に打開策は見つからなかった。

実際には美夫の姿を見ている者など何処にも居なかった。
夏が近いとは言え、夜になるとまだ肌寒いこんな季節に、誰が好き好んで人気の無い公園になど来るものだろうか。
まあ、中には例外も居ることは居る。
弟に女装をさせて連れまわした挙句、公園に放置してその反応を見て楽しむ女。
言うまでも無い・・・晴枝だ。
美夫は茂みに隠れて自分の姿を見ながら腹を抱えて笑い転げる晴枝の姿になど気付く筈もなかった。





「ホレ」

ベンチで項垂れる美夫の頬に突然冷たい物が触れた。

「あっ!」

びっくりして振り返った美夫の目の前に居たのは晴枝だった。
晴枝は冷えた缶コーヒーを両手に持ってニッコリと微笑んでいた。

「どこ行ってたんだよぉ、バカぁ・・・」

美夫は今にも泣き出しそうな声で晴枝に文句を言った。

「誰が馬鹿だ、コノヤロー」

晴枝は缶コーヒーの底で美夫の頭を軽く小突いた。

「痛てっ」

「せっかく人が気を遣ってコーヒー奢ってやってるんだから少しは感謝しなさいよ」

晴枝はそう言って美夫に缶コーヒーを1本渡すと、自分もベンチに腰掛けた。
そして缶コーヒーの口を開け、一気に喉に流し込んだ。

「ぷはーっ、缶コーヒーっても中々美味いもんだね。
 夜風も気持ち良いし」

晴枝は背もたれに腕を回して足を組んだ。
すっかり萎縮した美夫とは対称的にリラックスした態度。

「何が夜風だよ・・・人の気も知らないでさァ」

美夫はコーヒーをちびちびと飲みながら愚痴をこぼす。

「あっはっは・・・一人ぼっちで心細かったか?ん?」

「当たり前だろっ、いつ誰が来るかもしれないのに公園でこんな格好させられて・・・」

「そんな格好したのはアンタでしょうが」

「う゛・・・」

痛いところを突かれて言葉に詰まる美夫。
そこへ晴枝が更に追い討ちをかける。

「待ってる間何考えてた?」

「え??・・・・な、何も考えてねーよ!」

「嘘ばっかりー♪さっき誰か来ないかドキドキしてたって言ったじゃないよ」

「そ、そりゃ・・ドキドキはしたさ」

「そしていつしか快感に・・・」

「ならねーよっ!!」

姉への怒りは多少あった。
しかし姉が戻ってきてくれたことでほっとしたのだろう。
晴枝と言い合いをしながら美夫の心には徐々に平常心が戻りつつあった。





「あのさぁ、姉ちゃんいつまでこの家に居るつもりなんだ?」

美夫は残り少ないコーヒーをちびちびと飲みながら晴枝に話し掛けた。

「ああ?なによそれ・・・アタシに早く出てけって言ってんの?」

晴枝が空になったコーヒーの缶をプラプラさせながら方眉を吊り上げて美夫の顔を見る。

「い・・いや、そうじゃないけどさ、姉ちゃん見てると家に居てもなんか大変そうだし・・・」

「ああ・・・ババアのこと?
 別にアタシは大して気にしてないわよ。寧ろからかってストレス発散してるっつーか・・・」

晴枝は視線を正面に向け自嘲気味に笑った。

「んー・・・でもね、それは別としてもやっぱ近いうちにあの家は出るわ」

「え?・・・じゃぁ健一さんとこに戻るの?」

「うんにゃ。アイツんとこには戻んない。
 どっか適当にアパートでも見つけてそこに住むつもり」

「健一さんとヨリを戻す気は無いの?」

「・・・今んとこはね」

晴枝は祖母との喧嘩が問題では無いと言ったが、実はやはり祖母が原因の1つではあった。
晴枝は流産をしていた。
そしてそのことがきっかけで旦那の健一との関係は徐々に悪化していった。
最終的には別居という形で実家に帰って来たわけだが、しかし実家にも晴枝の居場所は無かったわけである。
悪い噂は直ぐに広がるのが田舎というもの。
『駆け落ちした娘が出戻ってきた』
近所のオバサン連中は晴枝のことを影で色々と噂していた。
それは美夫の耳にも少なからず入ってきていた。
勿論晴枝が知らないワケが無い。
いつも強気に振舞っている姉だが、その内面は人並みに傷つき易い。
それを知っている美夫は誰よりも姉を気遣ってやりたかった。

「俺さ、高校卒業したら上京して働こうかと思ってるんだ」

美夫は突然そんなことを打ち明けた。

「へぇ・・・いいじゃん」

それを聞いて晴枝は素直に関心し、賛成した。

父が他界してからは家計は母のパートと祖母の年金だけが頼りだった。
しかもじきに祖母も介護が必要になるだろう。
そうなれば美夫を大学に行かせる余裕は無くなるかもしれない。
だから美夫のその考えは「家計を助ける」という意味で感心した。
が、晴枝の気持ちの中にはそれとは別に、甘えん坊の美夫が自立するということの方がなにより嬉しかった。

「それでさ・・・良かったら姉ちゃんも一緒に住まない?」

美夫は照れたように顔を逸らしながらそう続けた。

「は?・・・何?
 それってアタシとアンタが一緒に住むってこと?」

晴枝は美夫の予想外の申し出に面食らった。

「いや、どうせならさ、2人で住んだ方が経済的にも得だし、家事とかにしても楽じゃん」

美夫は慌てて理由をつけ加えた。

晴枝は困った。
正直美夫の気持ちは涙が出る程嬉しかったし、実際自分もそうしたい気持ちはあった。
しかし美夫のシスコンっぽいところが少々気になっていた晴枝には、どうしてもその申し出を受ける気にはなれなかった。
それに自分の美夫に対する気持ちにもそれに似たような感覚が全く無いとも言い切れなかった。
だから尚更晴枝は断らざるを得なかったのだ。

「コラコラ、アタシの仕事はどうすんのよ?
 まさか東京から通えって言うんじゃないでしょうね?」

結局晴枝はその話を冗談めかしてうやむやにしてしまった。





「さて・・・と。んじゃぁそろそろ帰りますか」

姉のその一言に美夫は「待ってました」とばかりに腰を上げる。

「でもその前にぃ・・・」

「え?」

「トイレ♪」

がくっと膝を折る美夫。

「なんかぁ、ジュース飲んだらおしっこしたくなっちゃったのよね」

晴枝は恥じらいも無くそんなことを言ってケラケラと笑った。

「いいだろ、そんなの家帰ってからすりゃぁ・・・」

言われてみれば美夫も確かに尿意を催していたが、今はとにかく一刻も早く家に帰りたかった。

「ダメー。出るもんは出るのよ。
 我慢したら身体に悪いしね。幸い直ぐそこにトイレもあることだし・・・」

「分かったよ・・・じゃぁさっさと行って来いよ」

それならそれで早く済ませてもらおう。
美夫はベンチに腰掛けてシッシッと追い払うような手つきをした。

「何言ってんのよ。アンタも来るの!」

「ええ??・・・いいよ、俺はっ」

晴枝は渋る美夫の手をとって無理矢理立たせると、ズルズルと引き摺るようにしてトイレへと連れて行った。





「こらこらこらっ、放せって!
 なんで俺がソッチに行くんだよ!?」

「なんでって・・・アンタその格好で男子便所入ったらアウトでしょうが」

晴枝は美夫の手を握って自分と同じ女子トイレの方に連れて行こうとしていた。

「バカ、女子便所のがもっとアウトだろうが!!」

女装していることがバレた場合は確かに女子トイレの方がマズイことになるだろう。
が、実際にはどちらにしても人に見られたら大変なことになるのにかわりはない。

「やっぱいいって、俺家まで我慢するからさ・・」

必死で抵抗する美夫だったが、晴枝は冷たく言い放つ。

「お仕置きはまだ終わってないのよ?」

結局美夫は否応無しに女子トイレへと引っ張り込まれることになってしまった。





「なっ・・・なんで一緒に入んだよ?!」

晴枝は美夫を自分と同じ個室に連れ込んだ。
そして美夫の手をぎゅっと握ったまま無言で便器に腰を下ろす。

「うっ、うわっ・・・ちょっとタンマ!
 姉ちゃん、マジこのままするつもりかよっ!?」

晴枝は既にストッキングとパンティーを膝まで下ろしている。
形のいい丸い尻がジャケットの裾から露になっていた。

ちょろ・・・ちょろちょろちょろ

晴枝の股間から僅かな水の音が聞こえてきた。

「くっ・・・・」

美夫は流石に姉の姿を直視できなかった。
顔を扉の方に向けてじっと堪える。

じょぼじょぼじょぼじょぼ

姉の尿が便器の中に勢い良く放たれる。
その音がなんだかヤケ大きく聞こえた。
美夫は余りに恥ずかしくて、呼吸まで止まってしまいそうだった。

徐々に水音が小さくなっていく。
やっと終わる・・・とほっとしたのも束の間、美夫は晴枝の次の言葉に愕然とする。

「次はアンタの番だからね。
 姉ちゃん見ててあげるから、しっかり出すのよ?」

「う、嘘だろ・・・勘弁してくれよ」

美夫の顔が今度は真っ青に変わる。

「嘘なワケないでしょ。
 ・・・ほら、交代」

晴枝はトイレットペーパーで自分の股間を拭くと、パンティーとストッキングを上げて「よいしょ」と立ち上がった。

「あ、いや・・・なんかさぁ、俺やっぱションベン出そうにないや。
 だからいい、あははは・・・」

美夫は咄嗟にそんな言い訳をして逃げ出そうとする。

「待ちなさいよ・・・
 逃がさないっつーの」

晴枝が素早く美夫の手を掴んで引き戻す。

「んなこと言ったって、出ねーもんは出ねーんだよ!」

「アタシの放尿シーンは見ておいて、自分だけタダで帰ろうなんてことは許さないわよ」

「見てねーよっ!つーかそんなん見たくも無いし!!」

「うるさいっ!ションベンが出ないんなら別のモン出しなさい!」

「無茶言うなっ!
 別のモンってなんだよっ!」

(まさかウンコか?!・・・それだけは絶対嫌だぞ!)

「クソじゃ無いわよ・・・そんなモンされたら臭くて仕方ないでしょ?」

「じ・・・じゃあ何だよ・・・」

「決まってるでしょ?
 ・・・ス・ペ・ル・マ♪」

言うや否や、晴枝はくるっと美夫と体を入れ替えると、足払いを掛けて美夫を便器の上に無理矢理に座らせた。

「んなことできるかっ!・・・って、バカ、やめろって!!」

晴枝は美夫の足の間に屈み込むと、おもむろに美夫のモノを手で掴んだ。

「こんなに勃起してる・・・姉の放尿シーン見て興奮したのね?
 このヘンタイヤローが!」

晴枝はカチカチに勃起した美夫のナニを握ってニヤリと笑う。

「ね・・・姉ちゃん、まさかソレ咥えるつもりじゃないだろうな・・・」

美夫は「まさか」と思いつつも、釘を刺すつもりで一応聞いてみた。
すると

「はぁ?!アンタ姉にちんぽ咥えさせるつもり??」

晴枝は「信じられない」といった顔で美夫を睨みつける。

「アンタとうとう落ちるところまで落ちたわね。
 テコキだけじゃ物足りず、姉にフェラまで強要するなんて」

「誰も強要なんてしてねー!!」

「じゃぁアンタはどっちでして欲しいのよ!」

「ええっ?どっちって・・・」

晴枝の突然の剣幕に驚いて、美夫はオロオロし始める。

「手か口か、どっちでして欲しいのかって聞いてんのよっ!
 答えなさい!」

「て・・・手でいいよ!」

「『・・・でいい』ってのはどういう意味よ?
 本当は口でして欲しいんだけど遠慮して手でいいって言ってるわけ?」

「なにキレてんだよっ!?わけわかんねーよ!!」

次第に涙目になってくる美夫。

「本心で言いなさいよ、手なの?口なの?」

「ああっ、もう・・分かったよ、口!
 口でして欲しいんだよ、ホントは!」

こうなったらもう晴枝の望む答えを言わないかぎり埒が開かない。
そう判断した美夫はヤケクソでそう叫んだ。

「ほう、ほう、ほう?・・・やっぱり口か?このエロガキが!
 本心では姉ちゃんの口を犯したくってしかたないっての?ふーん」

で・・・望む答えを言ったが最後、もう美夫には逃れる術は無いのである。

「分かったから・・・変態でもエロガキでもいいから、やるんならさっさとやってくれよ」

美夫は腹を括って自ら『まな板の上の鯉』になり、「開きだろうが三枚おろしだろうが好きにしてくれ」
とばかりに言い放った。

「ええ〜、どうしよっかなぁ・・・」

(どっちなんだよっ!)

「して欲しかったらちゃんとお願いしないとねぇ?」

「何だよそれは?!」

「『どうしようもない変態の僕の汚いちんちんを、お姉さまのその美しい口でどうか慰めてください』って言うのよ」

(くそっ・・・変態はどっちだ!)

「わかったよ、俺の汚いちんちんをしゃぶってください、美しいお姉さま!」

「アハハ・・・わかったわ、そこまで言うんならしゃぶってアゲル。
 かわいそうな弟の為だものねぇ・・・『変態』の」

「ああ、そうだよ。俺は姉ちゃんにフェラチオして欲しくて堪らねーんだ。
 だから早く咥えてくれよ!」

美夫はもう恥ずかしいやら悔しいやらでわけがわからなくなっていた。
目を瞑って覚悟を決め、自分の股間を晴枝の顔の前に突き出した。
すると突然、なんの前触れも無く股間が熱いもに包まれた。

「うがっ」

思わず情けない呻き声が漏れてしまった。
見ると美夫のソレを晴枝は根本まですっぽりとくわえ込んでいた。

「う・・・わ、い、いきなりかよ」

熱く濡れた舌が美夫の敏感な部分に絡みつく。
そして晴枝の鼻息が美夫の恥毛をさらさらとくすぐった。

「く・・・あっ」

それは眩暈がする程の強烈な刺激だった。
姉が自分の股間に顔を埋めている。
その事実が美夫の脳髄をチリチリと焦がすのだ。

ぐ・・ぶちゅぅっ

晴枝は唾液をたっぷりと含ませて嫌らしい音を立てながら顔をスライドさせた。

「あ・・・ふぅ・・あっ」

美夫の口からは絶えず荒い息が漏れ続ける。

晴枝は今度は口を開けて舌で亀頭をぺちぺちと嬲るように刺激した。

「あっ・・あっ・・」

そして直ぐに再び深く飲み込む。

ぐちゅ・・・くぽ、くぽ・・・

顔の角度を微妙に変えながらリズムをつけてスライドを繰り返す。
美夫はあっという間に絶頂に導かれた。

「あ・・う、だめ・・だ、出る!」

その瞬間、晴枝は一層強く美夫のモノを吸いたてた。

「う、ああああああ・・・」

美夫のモノは晴枝の口の中で激しく暴れ、ありったけの精を放った。
その勢いが余りに強かった為、美夫のモノは自分から晴枝の歯に何度かコツコツとぶつかった。
しかしそのときの美夫はその痛みさえも快感に変えて感じていた。

「んくっ・・・んく・・・んぐ」

晴枝は美夫が射精している間も全く口を放すことなく、
寧ろ余計に押し付けながら喉の奥でその迸りを直接受け止め、ごくごくと喉を鳴らして全てを飲み干した。
その姿を見て美夫は胸を締め付けられるような気分に駆られ、堪らず姉の頭を無茶苦茶に抱きしめた。





それからどれだけ経っただろう。
便器に腰掛けたまま魂が抜けたように呆然としている美夫。
その傍らで母親のような顔で優しく美夫の髪を撫で付ける晴枝。
暫く夜の公園のトイレは静寂に支配されていた。

が、次の瞬間唐突に静寂は破られた。

「キャァ・・・」

女性の悲鳴らしき音。
それはトイレの裏の雑木林のあたりから微かに聞こえた。

「姉ちゃん?・・・今、なんか悲鳴みたいなの聞こえなかった?」

慌てて晴枝に聞く美夫。

「シッ・・・黙ってな」

晴枝がその美夫を制して耳を澄ます。

「(いやっ・・・・やだ!・・・放してー!)」

コンクリートの壁越しに女の声がする。

「外だ!どうしよう、誰かが襲われてるんだ!」

「美夫・・・黙ってついてきな」

晴枝は冷静にそう言うと、美夫を連れてトイレを後にした。

二人は声を頼りに茂みを掻き分けて慎重に進んだ。
暫く行くと徐々に声がハッキリと聞こえるようになってきた。

「きゃっ・・・んぐっ・・・・んんっ・・・んーーっ!!」

雑木林の中を距離にして10メートル程奥に行ったところだろうか。
男が女を組み敷いて、布の様な物で口を塞ごうとしているのが見えた。
どう見てもレイプだ。

「た・・・たすけなきゃっ!」

今にも飛び出しそうになる美夫を晴枝が引き止める。

「待ちなさいよ。もうちょっと様子を見てからの方が良いわ」

「んなこと言ったって、早くしないとあのひと犯されちゃうだろ?!」

「いや、だからさァ・・・
 もしかしたら、その・・そういう『プレイ』かも知れないじゃない?」

「・・・はあ?!」

美夫には晴枝の言うことがサッパリ理解できなかった。

「姉ちゃん・・・もしかしてアレ見て興奮してんじゃないだろうな?」

美夫が呆れたような顔で晴枝を睨む。

「ばっ・・・馬鹿言わないでよ、いくらアタシでもそんなこと・・・」

「怪しい」・・・美夫はそう思った。
晴枝は美夫と違って滅多にどもったりなんかすることはない。
そういうときはつまり図星なのだ。

「くそっ・・・姉ちゃんはそこで見てりゃいいだろっ!
 俺は助けに行くからな!」

美夫は姉の制止を振り切って飛び出していった。

「あっ、コラ美夫!」

ガサガサガサ

植え込みが音を立てて揺れる。

「誰だ!!」

男が美夫の方を振り返って怒鳴った。

「そのひとを放せ!!」

美夫が男の前に立ちはだかって勇ましく言い放った。
しかし美夫の姿を見るなり男は落ち着きを取り戻す。

「なんだ・・・女じゃねえか」

「え?
 ・・ああ、そういえばっっ!」

美夫はそのとき自分が女の子の格好をしていることをすっかり失念していた。
そして一瞬うろたえたその隙に・・・

「おらっ、つかまえた♪」

突然美夫は背後から羽交い絞めにされた。

「え??」

目の前には先ほどの男がいる。
そして襲われている女性も。

ということは・・・

「くそっ、仲間が居たのか!」

どうやら女を組み伏せていた男の他に隠れて見ていた仲間が居たようだ。

「姉ちゃん!たすけてくれよ、おいっ!」

美夫は茂みに向かって叫んだ。

が・・・返事は全く無い。

「う・・・嘘だろ・・・
 まさか逃げちまいやがったのか?姉ちゃん・・・」

愕然として体の力がひゅるひゅると抜けて行く。

「へっへっへ・・・ラッキー、こっちの女は俺が頂いちゃおうっと♪」

美夫を羽交い絞めしていた男が下碑た笑みを浮かべる。

「おお、マジついてるなぁ今夜は。二人いっぺんにヒイヒイ言わせてやろうぜ?」

そういって二人の男は美夫と見知らぬ女を地面に押し倒した。

「いやー、たすけてぇ!」

必死で泣き叫ぶ女。

「姉ちゃぁん・・・」

美夫も情けなく泣き叫ぶ。

「いやっ、止めて、いやあああぁぁぁ・・・」

女の着ていた服がビリビリと音を立てて破かれる。

「うわっうわっ、やめろ、やめろーーー!!」

一方の美夫は、仰向けにされ股の間に膝を入れられた状態でパンティーを下ろされる。

ずるっ

・・・ぶるんっ

そのとき白い布のしたから猛々しくそそり立った肉の棒が姿を現した。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

男、絶句。

暫し後、

「ぎいやあああああああああああああーーーーっ!!」

絶叫。

「なんだ?どうした??」

もう一人の男が駆け寄ってくる。

「おおおおお、男、・・男だ、コイツ!」

男が震える声で美夫を指差して言う。

「はぁ?んなわけ・・・」

そしてもう一人の男が美夫の股間に目をやる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・
 うわああああああああああああああああっっ!!!」

そして絶叫と共に走り去っていった。
どうやら流石の強姦魔も『ホンモノの変態』には敵わなかったようだ。

「・・・・・」

とり残された美夫。

「えっと、
 ・・・・・・・勝った?」

なんだか良く分からないが、どうやら強姦魔を追い払うことはできた。
美夫はほっと胸を撫で下ろすと、改めて襲われていた女性の方に顔を向けた。

すると

「いやああああっ!変態!コッチ来ないでー!!」

女は破かれた服を抱えて一目散に逃げて行った。

「・・・・・・」

美夫の股間では半勃ちのナニがぷるぷると左右に揺れていた。

やるせない気持ちにガックリと肩を落とす美夫。
その背中をポンポンと叩く者が居た。

「まぁ、人生色々あるわな。元気出しな」

暢気に一部始終を見物していた晴枝だった。

「おまえが言うなああぁぁぁ・・・!」




こうして美夫のはじめての『野外羞恥プレイ』は幕を閉じたのであった。



END



あとがき
〆切間際です。
あとがき書いてる暇もありません(マジです)