ヘルミンス2　第三話

ヘルミンス2
作・ゆーすけ
登場人物
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大神　仁（おおがみ　じん）主人公。捻くれた性格と素行の悪さが災いし、どこへ行っても嫌われる。現在両手骨折で入院中。	山本　遥（やまもと　はるか）仁の担当の看護婦。基本的には真面目なのだが、仁の所為で最近は暴力的な一面ばかりが表に出てしまっている。	網浜　舞衣（あみはま　まい）仁が収容された病院の入院患者。人見知りをしない明るい性格の少女。年相応に甘えん坊。	亀田　俊平（かめだ　しゅんぺい）仁に殴られて怪我をした少年。幸い怪我は軽く、現在は元気に学校へ通っている。
第三話　「病院の怪談」
小学生のとき、しょっちゅう腕などを骨折してギブスを巻いていたクラスメイトがいた。
そのクラスメイトの骨折した腕が妙に毛深かったことを、仁は病室のベッドで自分の腕を眺めながら思い出していた。

仁「あ…枝毛発見」

仁の腕は特に毛深くなっているということは無かった。
だが眺めているうちにたまたま１本だけ他と比べて太い毛が生えているのが目にとまった。
しかしよく見てみると、それは太いのではなくて２本の毛が同じ毛穴から生えているのだということが分かった。

だが…

仁「げっ、３本じゃん」

更に注意深く観察してみると、何ともう１本細い毛が同じ毛穴から生えていた。
まあ、だからどうしたというわけでも無いのだが…

仁（これはもしかして４つ葉のクローバー並に縁起が良いんじゃないのか？？）

と、こんなくだらないことを考えてしまう程に、つまりは退屈なのであった。

仁「うおーっ、なんか良いことあるかも！！」

ベッドの上で不自由な両手を挙げてガッツポーズをとる仁。
するとそこに突然ドアを叩く音が…
仁は両手を万歳した格好のまま首だけ捻ってドアの方を見た。

？「失礼しまーす」

ドアが開き、看護婦がステンレス製のワゴンを押して部屋に入って来た。

仁「………」

その姿を見て仁の顔が強ばる。

遥「ほれ、メシの時間よ」

入ってきた看護婦は昨日仁にビンタをくれたあの看護婦だった。
２人の間に得も言われぬ緊張した空気が流れる。
押して来たワゴンには仁の夕飯が盛られたトレイが載せられていたのだが、遥はそのワゴンを脚で仁の目の前に押しやるとそのまま腰に手を当てて仁王立ちになった。

遥「さっさと食いな」

遥はその姿勢のまま仁を汚い物でも見るような目で見ながら吐き捨てるようにそう言った。

仁「てめぇ…何様のつもりだ？」

仁はこめかみに血管を浮き上がらせながら遥を睨み付けた。

遥「あんたこそ何様よ？メシくらい自分一人で食べてみなさいよ！」

仁「く…っ！」

遥「あ、それとも赤ちゃん様でちゅか？
　　ばぶばぶぅ～」

仁「ちゃんに様つけんなっ、アホ！
　　ああいいよ、食べてやるよ、そのくらい。…見てろよコノヤロー」

遥「へぇ～、どうやって食べるのかしら？まさか犬みたいに直接皿に口つけて食べたりはしないわよね？」

遥は腕を組んでニヤニヤしながら仁を見下ろした。

仁「うぐ…」

仁は皿を見つめたまま動けなくなってしまった。
遥の言う通り直接口を付けて食べるつもりだったのだが、言われてその姿を想像し、そのあまりに情けなさに気付いてしまったのだ。

悔しさに顔を真っ赤にしている仁を嬉しそうに眺める遥。
ここだけの話、彼女は少しばかりサドの気があるようだ。

まあ、それはさておき…仁は何かを決意した様子で突然トレイに置かれたスプーンをキっと睨むと、包帯でぐるぐる巻きの両手でそれを何とか掴もうと試みた。
片方の手でスプーンをトレイの端まで持って行き、縁のカーブに沿わせて持ち上げ、なんとか柄の部分を両手で挟み込むことに成功した。
しかしそのスプーンを皿の上のライスに突き刺すのがやっと。
そのスプーンでライスをすくい上げることまでは不可能だった。
仁は構わずにその皿に顔を近づけると、皿の中のライスをスプーンごと口に咥えた。
一応スプーンを使ったと言えなくも無いが、格好としては犬食いとさほど違わない。
仁としては「これでどうだ！」というつもりなのだろうが、端から見れば惨め以外のなにものでもなかろう。
一方遥の方は仁のこの情けない姿を見て多少は溜飲が下がったのか、ニヤニヤと見下した笑みを浮かべながら

遥「食べ終わったらそこの水道で洗ってからワゴンに戻しておいてちょうだいね」

と、仁には到底無理な注文を残し、来たときよりは幾分すっきりした顔で去っていった。

結局遥が出て行ってからも意地を張り続けた仁は、その後1時間以上も掛けてこの食事法を貫いた。
何が彼にそうさせたか本人以外に理解のできないところではあるが、根性だけは大した物と言える。
仁は最後の一口をスプーンごと口に咥えたままもぐもぐと咀嚼し、そしてライスを全て飲み込むと、そのスプーンをトレイの上に吐き出した。

カラン

金属音を響かせてトレイの上に投げ出されたスプーンは柄の付け根の部分からグニャリと曲がっていた。

これは別に顎の力で無理矢理ねじ曲げたわけではない。
これが仁のたった１つの特技なのだ。
と言っても口の中でスプーンを曲げたのは今回が初めてのこと。
それに曲げられるのはスプーンだけ。
人の首をねじ切ったりといったとんでもない力は無い。
せいぜい隠し芸として宴会の席を盛り上げるくらいが関の山だろう。

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さて、散々な食事ではあったが、終わってしまうと他にやることも無く、ただただ退屈なだけ。
何もない部屋でどうやって暇をつぶすか…
入院生活も一週間近くになると暇こそが最大の敵となる。

仁「…」

少しは気が紛れるかと思い何度も窓の外に目をやる。
いつの間にかすっかり日は落ち、外は真っ暗。
向かいの病棟の白い壁が青白く夜の闇に浮かび上がっている。
そして、見えた風景はそれだけ。
そもそもこの窓から病院の壁と空以外の景色が見えたことは一度も無かった。

僅かながらも期待を持ってしまった自分に軽い嫌気が差し、仁は再び部屋の中に目を移した。
だが、視線を移すその瞬間、視界の中に何かが見えた。

仁（！）

慌てて窓の外に視線を戻す仁。。
同時にベッドから飛び降りて窓際まで駆け寄る。

窓の外に見えたのはおそらく人影。
しかしここは病院の７階。
人影が見えること自体がおかしい。

仁は窓にへばり付きながらしきりにあちこちへ視線を走らせた。

仁「屋上か！」

そう、この場所から見える場所で人が居る可能性があると言ったら他に無い。
仁は向かいの棟の屋上を注意深くじっと見つめ続けた。

仁「居た！」

確かに人だった。
屋上で何かしているのか、時々立ったりしゃがんだりしながら屋上を移動している。

仁「食後の運動に丁度良いな」

仁はスリッパを履き直して部屋の出入り口へ向かった。

仁「へっへっへ…俺が本気出せばなぁ、これくらいのモンどうってことねえんだよ」

仁は口の端を上げニヤリと不敵な笑みを浮かべると、自信満々に鉄の扉に挑んだ。
腕を交差させ、その腕と腕でドアノブを挟み込み、そのまま回す。

仁「く…ぐぐ…」

が、腕が滑って思うようにいかない。

仁「畜生…ならば奥の手！」

今度はスリッパを脱いで床の上にペタンと座り込む。
と思うと素足でドアノブを掴んだ。

仁「よっ…と…オラッ…！」

両足をすり合わせるようにしてゆっくりとドアノブを回す。

仁「くくくく…ぐ、ぐぉぉ…」

ドアノブはなんとか回った。
しかしここからがまた困難だった。
扉は部屋の内側に向いて開くように付いている。
つまり仁はこの体勢のままドアを引いて開けなければならないのだ。
仁はまるで芋虫か海老かというような姿でドアの前でバタバタと悪戦苦闘を繰り広げた。
苦労の甲斐あってなんとかドアの隙間に身体をねじ込むことに成功した仁。
その頃にはすっかり全身が汗でびしょ濡れになっていた。

仁「おぇぇ～、食ったモン吐いちまいそうだぜ…ったくよぉ」

仁は誰も居ない廊下に向かって文句を言いつつ、履いていたスリッパの片方をドアの隙間に挟んだ。
こうしておけば戻ってきたときは押すだけで開けることができるのだ。
近くのトイレで代わりの履物を調達して…これでやっと自由に病院内を歩き回ることができる。
別に何が楽しいと言うわけでも無いのだが、久しぶりに病室の外へ出られたという開放感が仁にとっては特別だった。

仁「とりあえずはさっきの人影の正体でも確かめてやるか。
　　…んで、屋上へはどうやって行けばいいんだ？」

仁は辺りをキョロキョロと見回しながら、冷たいリノリウムの床の上をペタペタと歩く。
両側には仁の部屋と同じような扉がずらっと並んでいる。
ドアの横に付いたプレートを見る限り患者が入っている部屋は少ないようだ。

そのまましばらく真っ直ぐ廊下を歩いていくと、先の方にぼんやりと明かりが見えてきた。
正面にはこちら側と同じような真っ直ぐな廊下、そしてそれよりも少し幅の広い廊下が直交して右手の方に延びている。
その廊下が丁度交差する場所に明かりの源…ナースステーションがあった。

今ここで看護婦達に見つかってしまうのはまずい。
仁は壁伝いに慎重に歩を進めた。
そしてナースステーションの丁度裏側の壁の辺りまで辿り着く。
仁はそこで一端壁にもたれて一息つくことにした。
するとナースステーションの中から若い看護婦達の楽しそうな話し声が聞こえてきた。

看護婦「何それ、マジ？ちょー痛くない？」

この病院の看護婦達の間では、夜勤の当番に当たるとこうしてナースステーションに寄り集まって
噂話や実際にあった恐怖体験などを話して盛り上がるというのが恒例になっていた。

題して『本当にあった病院の怖い話』。

少々不謹慎な話題ではあったが、看護婦の激務を考えればまあ多少の息抜きは必要だろう。

仁「おめーらウゼぇよ…どっか消えてくれっつーの」

しかし暗い廊下でじっと待たされる仁は堪ったものではなかった。

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最初に病室の窓から見えた風景とこの廊下の構造から考えて、どうやらこの病院は北と南にそれぞれ10階くらいの鉄筋コンクリートの建物に分かれているようだ。
それがこのナースステーションのある廊下で繋がって、上から見ると「工」の字形になっているらしいことが想像できる。
仁の病室は北棟の東の端。南側の部屋だ。
その窓から見えたのが南棟の東側の屋上ということになる。
どちらにしてもこの渡り廊下を通らないと南棟には行けないわけだ。

いい加減仁が痺れを切らしかけていた頃、突然誰かが仁に話しかけてきた。

遥「あーっ、馬鹿眼鏡！アンタ何やってんのよ、こんなところで！」

壁に持たれてナースステーションの方に注意を傾けていた仁は背後の廊下から近づいていた遥の気配に全く気付かなかった。

仁「なんだ…飲尿看護婦か」

しかし相手が顔見知りの看護婦だと分かると敢えて内心の動揺を隠して悪態をついた。

遥「あんた…それバラしたら殺すわよ」

遥は冗談とも思えない迫力で仁の胸倉を掴むと鋭い眼光で睨み付けた。

仁「看護婦が患者に言う台詞かよ」

やや迫力に圧されながらも、なんとか憎まれ口を返す。

遥「うっさいわね。あんたなんか患者じゃないわよ。
　　犯罪者でしょ、犯・罪・者！
　　さっさと独房へ戻って臭い飯でも食ってさいよ！」

遥は怯むこと無くさらにそのままの勢いで畳みかけた。

仁「それ他の患者が聞いたら泣くぞ…」

遥のあまりの剣幕についに押し切られてしまった仁は、視線をそらしながらボソっとそう呟くのがやっとだった。

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遥「屋上に人が？」

仁「本当だって。俺、部屋の窓から確かに見たんだからさぁ」

仕方なく部屋を抜け出した理由（というか口実）を遥に話す仁。

遥「で？どこの屋上よ」

言いながら遥は懐中電灯で足下を照らし、ナースステーションに背を向けて階段を上がり始めた。

仁「あ、そっちじゃなくて向こうの棟…」

遥「上の階の連絡通路使うのよ。ここじゃあれだから…」

仁「あ、なるほど」

仁は納得すると慌てて遥の後を追った。

遥にしても仁と一緒に院内をウロウロしているところを同僚に見られたくなかったのだ。

仁「あ…あのさー、俺もう部屋戻っても良いか？」

階段を上りながら仁は後ろから遥に話しかけた。

遥「駄目よ。野放しにしたら危ないじゃない、あんたみないなの」

遥は振り返りもせずにスッパリと仁の申し出を却下した。
彼が真っ直ぐ自分の病室に帰るつもりがないことくらいはお見通しなのだ。
仁は遥の後ろ姿に向かって思いっきり顰めっ面をして、それからブツブツと口の中で文句を言いながら彼女の後をついて行った。

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連絡通路を通り南棟に着くと、すぐ正面に屋上へと続く階段があった。

仁「ところでよ…今何時くらいなんだ？」

病院の中はどこも真っ暗で人の気配が全く無かった。
皆寝静まってしまったのだろうか？

遥「10時半くらいかな？」

仁「うそっ、マジもうそんなかよ！」

仁の感覚では、まだせいぜい夜の8時を過ぎたくらいだろう…というつもりだったらしい。

遥「大声出すんじゃないっつーの」

仁「いてっ、懐中電灯で殴るな！」

しかしそうなると益々こんな時間に屋上に居るなんて怪しい。
仁はいつの間にか遥を追い越して階段を上っていた。
そして行き止まりの鉄の扉の前で立ち尽くす。

遥「ドア開けられないのに先に行ってどうするつもりよ」

仁「うるせー、とっとと開けやがれ」

遥「あのねー…」

遥が扉を開きながら仁に対して文句を言おうとしたときである。

遥「あっ！ちょっと」

仁は素早く扉の隙間から屋上へ出て行ってしまった。
とっさに驚いてノブから手を離してしまった遥。
重い鉄の扉がガチャンと音を立てて閉まる。

遥「もうっ！」

頭に来て取っ手に力を込める遥。
しかし…

遥「あれ？…あれ、あれ？」

ガチャガチャ…ガチャガチャ…

いくらノブを回しても扉は開かない。

遥「んっ、と…」

扉に身体を預けて体重をかけながらノブを回してみるがやはり駄目だ。
どうやら鍵が掛かっているらしい。

遥「おっかしいなぁ」

しかしこの扉は屋上側からは鍵の開閉ができない仕組みになっている。
扉を閉めた拍子に偶然錠が下りてしまったのだろうか？
遥はどこか釈然としないものを感じながらも、こうして扉の前で佇んでいても仕方ないと考え、即座にナースステーションにとって返した。
扉の鍵を持って来る為だ。

さて、一方屋上の仁の方だが…

いっこうに出てこない遥のことなど全く気にも掛けず、件の人影を探すのに夢中になっていた。
この際鬼が出ようが蛇が出ようが退屈に悩まされるよりはずっとましだった。

仁「おーい、誰か居るんだろ？隠れてないで出て来いや」

スリッパをペタペタと鳴らしながら埃っぽいコンクリートの上を歩き、暗闇へ向かって声を掛けた。

すると…

「何？」

屋上の真ん中にぽつんと、仁の方を向いて１人の少女が立っていた。

仁「ぉ…」

ちょっと意表を突かれたのか、仁は思わず声を飲み込んでしまった。

仁「な…何だ、ガキじゃねーか」

しかし相手が子供だと分かると肩の力を抜いてほっと息を吐いた。

少女「おにーさん、誰？」

少女は直立したまま、真っ直ぐな視線で仁を見つめながら問いかけた。
その瞳は月の光に照らされて、吸い込まれてしまいそうな程神秘的に輝いていた。

仁「………フン」

仁は少女の前に一歩踏み出すと、ストンと腰を屈めて少女の目線に合わせる。
が、真っ直ぐ顔を見詰め返すのでは無く、必要以上に顎を突き出し、斜め上に見上げるような感じで少女の顔を睨み付けた。
少女の質問には全く答えるつもりが無いのか、その姿勢のままじぃっと少女の顔を睨み続ける。
少女はと言えば、これにどう反応すれば良いのか分からず、きょとんとしてしまっていた。

少女は白い大きめのワンピースを着ていた。
足は素足にサンダル。
黒く艶やかな長い髪が風に揺れている。
そして何といっても特徴的なのが大きくてパッチリとした目だ。
更に大きめの瞳に小さい鼻や口…
見れば見るほど可愛らしい女の子であった。

「何こんな小さな女の子にガン飛ばしてるのよっ、アンタは」

スパン

小気味良い乾いた音と共に後頭部に衝撃が走った。
殴られた部分を包帯の巻かれた手でさすりながら振り返ると、手にスリッパを持った遥が仁の後ろに立っていた。
視線をそのまま足下に落とすとストッキングに包まれた足がコンクリートの床を踏みしめていた。

仁「わざわざ履いてるスリッパ脱いでまで人の頭叩くかぁ？」

遥「ふふん♪…さっきトイレ行ってきたばっかりよ」

仁「うわっ、きたね！」

それを聞いて慌てて頭をバサバサと叩く仁。
そのやりとりを見ていた少女が突然声を出して笑い出した。

少女「アハハハ…ＴＶみたい、おもしろ～い」

その少女の笑顔を見て遥も気持ちがちょっと和んだのか、遥は優しい声で少女に語りかけた。

遥「舞衣ちゃん、どうしたの？こんな時間に…」

舞衣「お散歩してたの。お月様が綺麗だったから…屋上に来たら良く見えるかなぁって思って」

少女は遥の問いにすらすらと答えた。
嘘を言っているようには聞こえない。

遥「そうね。本当綺麗なお月様…」

遥は髪をかき上げながら夜空に浮かぶ大きな満月を見上げた。

仁「似合わねぇ～」

その横で仁が詰まらなそうな顔でボソっと呟く。

遥「アンタは黙ってなさい！」

舞衣「アハハハ」

笑いのツボに入ってしまったのか、その後少女は仁と遥が何か言う度に腹を抱えて笑った。
遥は次第に照れくさくなってきてしまい、二人をそれぞれの病室まで送るとさっさと自分の持ち場に帰っていった。
仁もそれなりに暇もつぶせてそろそろ眠くなってきていたので、この日は大人しく自分の病室で寝ることにした。

しかしこのとき舞衣はただ月を見る為に屋上に居たわけではなかった。
彼女が屋上で行っていたあることが…後に大変な事件を巻き起こすことになる。
2005.10.16
ヘルミンス２
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大神　仁（おおがみ　じん）主人公。捻くれた性格と素行の悪さが災いし、どこへ行っても嫌われる。現在両手骨折で入院中。	山本　遥（やまもと　はるか）仁の担当の看護婦。基本的には真面目なのだが、仁の所為で最近は暴力的な一面ばかりが表に出てしまっている。	網浜　舞衣（あみはま　まい）仁が収容された病院の入院患者。人見知りをしない明るい性格の少女。年相応に甘えん坊。	亀田　俊平（かめだ　しゅんぺい）仁に殴られて怪我をした少年。幸い怪我は軽く、現在は元気に学校へ通っている。