ヘルミンス〜触手少女〜
作・ゆーすけ
挿絵・社

第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 最終話

<第五話>


旧校舎裏に突如現れた怪物。
夕日をバックに聳え立つ醜悪な肉の塊は、肌色とピンクが斑になったグロテスクな肌を波打たせ俺達を見下ろしていた。

これがあの美千留だなんて到底思える筈が無い・・・

「うわあぁぁぁぁぁ!!」

山田が突然悲鳴を上げて立ち上がった。

ザァァァッ

同時に黒い触手が猛スピードで俺の脇を抜けた。
触手は山田目掛けて一直線に進んで行く。

「がっ・・・」

山田は声を上げることすら出来ずにその触手に絡めとられてしまった。

「ぐっ、がぁ・・放せちくしょー!」

ばたばたと暴れる山田の体を触手は軽々と宙に持ち上げる。

ズ・・ズズ・・・

「え?」

山田の様子に気を取られている隙に別の触手が俺の足元にも伸びていた。

「わっ、わっ、・・・うわーーー!!」

俺は呆気なく山田同様触手に捕まってしまった。

「ククッ・・・アハッ・・・・アハハハハ」

笑っていた・・・
無様に地面に這い蹲る俺の頭上で美千留は触手の塊の中から裸の上半身を覗かせ、目に異様な光を湛え狂った様に笑っていた。

ズズズズ・・・

美千留は伸ばした触手の先に俺達の体を捕らえたまま、ズルズルと巨体を引き摺って本条さんに近づいていった。

「貴女が本条さんね?」

美千留は生気を無くし地面に仰向けに横たわる本条さんを覗き込むようにして話し掛けた。

「あらあら・・・女の子の顔を殴るなんて・・・あの男も酷いことをするもんね。
 でもその顔もそれはそれででなかなか素敵よ・・・クスクス」

暗くてここからでは本条さんの様子は良く判らない。
果たしてまだ意識があるのだろうか?
かなり酷く山田に殴られていたようなので、おそらく顔なんかも大変なことになっているだろうと思うが・・・

「あら・・・貴女だって随分可笑しな格好よ?自分のからだ鏡で見てみたら?」

だが彼女は驚いたことに平然した口調で美千留に対して軽口を叩く余裕さえあった。

「ああ・・・でもそんな馬鹿みたいに大きい図体、収まる鏡なんかありゃしないわね」

しかし美千留はそんな本条さんの様子に全く動じることなく、寧ろその反応が愉しくて仕方がないというように目を輝かせた。

「アハッ・・アハハハ。そうよ、そのくらい元気でなくちゃ困るわ。
 なんたって貴女にはこれからタップリとお礼をしなくちゃいけないんだから・・・」

「・・・」

「うふふふ・・・たっぷりと可愛がってあげるわぁ♪」

ピシュッ・・シルシルシル・・・

「んあ゛っ!」

細い触手が美千留の指先から伸び、本条さんの首に巻きつく。

「暴れないでねぇ?・・・まだ力加減が判らないから下手すると殺しちゃうかも・・・」

「んっ・・・はっ・・いやぁぁぁ」

しばらく本条さんは激しく足をばたつかせていたが、じきに大人しくなった。
地面を強く踏みしめていた靴底が1回ジャリッと音を立ててから、膝の力がかくんと抜けた。
あとは糸の切れた人形のように不自然なくらいダランと地面に四肢を投げ出して動かなくなった。

「・・・どお?クク・・気持ち良くなぁい?本条さんっ」

「やっ・・・何?何なの、これ?か・・体に力が・・・入ら・・ない・・・」

本条さんの体に巻きついた触手からなにやら粘液のようなものが滲み出していた。
その粘液に痺れ薬のような効果でもあるのだろうか?

「さて・・じゃぁそろそろ裁判を始めましょうか」

(裁判?!
 ・・・美千留はいったい何を始めるつもりなんだ?)

「本条さん?全部正直に話すのよ・・・そうしたらご褒美にとっても気持ちの良いことをしてあげる♪
 もっとも・・・正直に話してくれなくても、やっぱり気持ち良いことはしてあげる・・・嫌っていう程・・ね」

美千留は満足そうに口元を歪めると、上体を起こし周囲に視線を巡らせた。

「原告は私・・・春日美千留。
 被告は本条早苗。
 重要参考人・・・えーと名前なんて言ったっけ?まあいいや・・・不良A君。
 傍聴人は白石翔太君・・・他、美術部の皆さんです♪」

美千留はまるでこれからゲームでも始めるのかと言うような陽気さで声高らかに開廷を宣言した。

ところで「美術部の皆さん」って言うのはあの触手の塊に半ば同化しちゃってる人達・・・のことだろうか?
・・・俺は益々今の美千留の神経がわからなくなった

「さて、それじゃぁ参考人の不良A君。誰に命令されて私をレイプしたのか言って貰いましょうか?」

レイプ・・・
美千留はやはり山田達に無理やり犯されていたのだ。
その事実と・・・そんなことを妙に軽い調子で話す美千留の様子に俺は2重のショックを受けた。

「くっ・・・そいつだよ。そこの女・・本条にお前を犯せって・・・頼まれてんだ!」

山田が首に巻きついた触手をなんとか緩めようと必死に足掻きながら、声を絞り出して証言した。

「本当だ!嘘じゃねぇ!・・・俺は関係無いんだ!!」

関係無いとはよく言えたもんだ・・・呆れると同時に俺は山田に対して激しい怒りが込み上げてくるのを感じていた。

が、それにしても・・・

(本条さん・・・やはり君が美千留を・・・?
 いったい何故そんな・・・)

「いやぁっ!嘘よっ、嘘!そいつの言うことなんか全部デタラメに決まってるわ!
 私がそんなこと・・・するわけが・・・っ」

本条さんが俺の心の声に反応したかのようなタイミングで声を張り上げた。
彼女は自由になる首から上だけを激しく横に振り必死に否定する。
それに合わせて涙が散り、きらきらと輝いて地面に落ちる。

「けっ・・この状況で今更隠したって意味ねーだろうが、バカ」

宙吊りの何とも情けない格好で啖呵をきってみせる山田。

「あー・・・実行犯の不良A君。アンタもう黙ってていいわよ。君どっちにしろ死刑確定だから」

そんな山田の姿にうんざりした表情を浮かべると、美千留はあっさりと彼に死の宣告を言い渡した。

「なっ!・・・ちょっと待てよ!俺はそいつに騙されただけなんだってっ!」

「うるさいって言ってんのよ!」

「ぐおっ!?」

ベギョッ

不気味な音がして、山田の首が捩れた。

何が起こったのか一瞬理解できなかった。

そしてそれっきり山田は二度と口を利かなくなった。

・・・死んだのだ。
同級生の男子が俺の目の前で・・・殺された。
それも幼馴染の美千留の手によって・・・

宙釣りの山田のズボンの裾から茶色い液体がボタボタと滴った。
とたんに辺りに異臭が漂い始める。

「キャッ・・・きったなーい、コイツうんこ漏らしてやんのぉ♪」

美千留はふざけてクネクネと身を捩ると、山田の体を捕らえていた黒い触手をブンッと一振りして山田の体を地面に投げ捨てた。

ドサッ

山田の体が重たい音を立てて塀に当たった。
そしてそのまま重力にしたがって地面に落ちる。
その光景を目の前にして俺は只言葉を失いガタガタと身を震わせるしかなかった。

「さてさて、うるさいのも居なくなったことだし・・・それじゃ犯行の動機なんて聞かせてもらおうかなぁ?」

これはあくまでも私刑(リンチ)なのである。
だから弁護士も居なければ当然黙秘権なども認められない。
それどころか証拠や証言なんてものさえ必要とされないのだ。
本条さんは美千留の気が済むまでただひたすら甚振られ、それに耐えるしかない。
しかも命の保証さえない・・・
俺ならきっと耐えられないだろう。
せいぜい泣いて命乞いをするくらいか・・・
しかし本条さんは小さく身を震わせながらも気丈に語り始めた。

「あいつら・・・山田達をこの学校から追い出す為よ」

「ふーん・・・何であいつらを追い出さなきゃいけなかったのかしら?」

美千留は本条さんを見下ろしながら高圧的に詰問を続ける。

俺はとうとう黙って居られなくなった。

「美千留っ、本条さんは山田達に脅されてたんだっ!彼女は被害者なんだよ!!」

俺は本条さんを庇って美千留に意見した。

自分が標的とされていなければ俺でも意見できる。
いや・・・いま美千留を止められるのは俺だけだ。
そんな自惚れもあったのかもしれない。
・・・だがそれは単なる俺の勝手な思い込みに過ぎなかった。
俺の発言は美千留の怒りに更に油を注ぐだけだった。

「傍聴人は黙って聞いててよねっ」

美千留のイラついた声が俺を一喝する。
情けないことに俺はそれだけで震え上がってしまって、それ以上何も告げられなくなってしまった。

「そうっ、そうなのよっ、あいつら私をレイプして更にお金を脅し取ろうと・・・」

本条さんが俺の言葉を次いで必死に美千留に訴えかけた。

「ふふふ・・・山田が死んだと思ってそんな嘘が私に通用すると思っているの?・・・馬鹿な子」

どうやら情状酌量・・・という希望も薄そうだ。

美千留は同情するどころか尚一層サディスティックな笑みを浮かべると、触手を不気味に揺らめかして見せた。

(え?・・・待てよ
 嘘ってどういうことだ?
 美千留はいったい何が嘘だって言ってるんだ?)

「・・・・・・」

「あいつらは貴女をレイプしたことなんか無いわ。・・・ただ貴女を仲間に引き込もうと考えていただけ・・・そうでしょ?」

「なかま・・・ですって?」

本条さんが顔をしかめて聞き返す。

「そうよ。
 あいつらは友達が欲しかったの。
 優等生だと思っていた貴方が実は自分たちとそんなに変わらない・・・って知ってね」

「ふざけないでよっ!
 ちょっと万引きしただけでなんであんなやつらの仲間扱いされなきゃいけないのよっ!
 不愉快だわ!」

「万引き?
 ねぇ・・・その話興味あるわぁ〜。もっと聞かせて?」

「・・・・」

「なーに?今度は黙っちゃうの?
 ほらぁ、さっきみたいに喋ってよ・・・つまんない」

「・・・あんた・・・どこまで知ってるの?」

「さあねぇ〜、なんとなくよ。なんとなく♪」

「くっ・・・」

本条さんは額に汗を浮かべながら苦虫を噛み潰したような表情でそれっきり黙ってしまった。

「貴女に黙秘権なんか無いのよ〜?・・・いいわ、それならそれでやり様はあるんだから」

そう言うと美千留は体を寄せ、真上から本条さんを覗き込みながら

「!!」

「え゛・・・・・・・・ごぁぇ゛ぇ゛ぇ゛・・・」

そして突然えづきだしたかと思うと・・・

ボタ・・ボタボタ

「ひいっ!」

美千留の口から芋虫の様なものが吐き出され、それが次々と本条さんの胸の上に降り注いだ。

「嫌っ、嫌ぁっ!・・・取って、取ってー!!」

胸の上に落ちた芋虫は元気良く這い回りながら、ブラウスの合わせ目を見つけると挙ってその中へと入って行く。

「嫌ぁー!ひぃぃっ・・き、気持ち悪い!」

本条さんは必死で身を揺すって芋虫の侵入を拒むが、残念ながら太い触手に両腕の自由を奪われている彼女には芋虫達を振り払うことはできなかった。
そして合計10匹程の芋虫が、彼女の胸の頂点を目指してブラウスの下を這い回る。
その様子はブラウスの上からでも十分に見てとれた。

「あっ・・・ひっ・・・ぐ・・ぅぅ」

本条さんは目を瞑って歯を食い縛りながらそのおぞましい感触に耐えていた。

「ねぇねぇ、本条さん・・・それってなかなか気持ち良くない?」

「う・・・うう・・うううう・・・」

本条さんは目の端からボロボロと涙を零している。
傍から見ていて気持ちが良いだろう筈が無いと思う。
が、美千留は

「ほらぁ、翔ちゃんの指だと思ってごらんなさいよ。・・ね?今貴女の胸を翔ちゃんの指がグニグニって揉みしだいているのよ?
 ・・・ほら、どう?」

言いながら美千留は細い触手を起用に使って本条さんのブラウスのボタンをはずしてゆく。

「・・・うっ・・・・ふっ・・」

やがてブラウスの下から彼女の形の良い乳房が顔をだした。

「あらあら、翔ちゃんったらテクニシャン♪
 あなたの乳首を親指と人差し指で摘まんでクリクリしながら、同時におっぱい全体を揉んでくれてるわよぉ〜?」

いつの間にかブラジャーははずされており、勃起した乳首に吸い付くように芋虫が頭を押し付けていた。

「あ・・・ぐぅ・・・嫌・・・放してよぉ・・」

「え?・・・翔ちゃん今度は舌でアソコをペロペロしたいの?・・・もう、せっかちなんだからぁ・・・」

美千留の妄想の中の俺は嫌がる本条さんを嬲り続ける。

「嫌っ!止め・・っ」

「でもしょうがないわよねぇ・・・だって若いんですもの、こんないやらしい顔見せられたら男の子なら誰だって我慢できなくなるわよね♪」

美千留は恐怖に歪む本条さんの顔を眺めながら、心底愉しそうに話続ける。

そして一本の触手が本条さんのスカートの中に消えた。

ブチュウッ

「ひぎぃぃぃぃっ!」

一拍置いてから本条さんの白い喉がグンっと仰け反り、喉が押しつぶれたような・・・声にならない悲鳴が彼女の口から発せられた。

「あははっ・・ゴメ〜ン、勢い余って子宮まで突いちゃった♪」

美千留は悪びれる風も無くケラケラと笑いながら謝る。

「ひ・・・ひひゅっ・・ひゅふっ・・・」

本条さんは目を剥いて口の端から白く泡立った唾を垂らしながら、ひゅーひゅーと歯の間から息を漏らしていた。

「ねぇ・・ほら、どうせ許してなんかあげないんだからさぁ、正直に全部話しちゃいなさいよぉ」

本条さんの股間に刺さった触手をブラブラと揺すりながら美千留が残酷な言葉を投げ掛ける。

「えっ・・ぐっ・・・ぅ・・・ぁああ」

本条さんはとうとう両目から大粒の涙を流しながら泣き出してしまった。

「成績優秀、家はお金持ち。おまけにスタイルも良くて・・・言い寄ってくる男の子もさぞかし沢山居たでしょうに。
 いったい何が不満だったのかしら?」

泣きじゃくる本条さんに顔を寄せ、まるで母親の様に優しく語り掛ける美千留。

「ねぇ・・・万引きの常習者さん?」

美千留が本条さんの髪を掻き揚げながら囁いた。

「あふっ」

本条さんが一瞬全身をビクリと波打たせる。

「嫌・・嫌、いやっ・・・言わないでぇぇ!!」

「万引きしてるところを見られたのよね?あいつらに」

(ど・・・どういうことだ?
 本条さんが万引きだって?)

「え・・ぐっ・・・」

「で、わざと問題を起こさせて退学に追い込もうって魂胆?
 それで私はその餌としてあんな目に遭わされた・・・と」

「・・・・・」

「・・・・そうよ。あんなことで私の経歴に汚点が残るのなんて堪えられなかったのよっ!」

「へー・・・」

本条さんの告白を聞いた美千留はなにやら物足りなそうに鼻を鳴らした。

「じゃぁ翔ちゃんに近づいたのもその為?・・・名誉の為に自分の体を犠牲にしたってこと?」

「・・・・・・」

美千留の問いかけに本条さんは黙ったままだ。

「でも、それも本心では無いでのしょう?貴女にそこまでの覚悟があるなんて思えないもの・・・
 他人の私を犠牲にするのはなんてことなくてもねっ」

美千留は独りで語り続ける。

「貴女、前から翔ちゃんに色目使ってたでしょう?私知ってるんだから・・・くくく」

「・・・・・っ!」

「恋愛するのが怖いんでしょ?あなた。
 あいつらを追い出すっていう作戦の為に自分は仕方なく翔ちゃんに抱かれる・・・
 そうやって自分の気持ちに嘘をついて・・・そんなことまでしないと恋愛もできない意気地なしなのよ、貴女は」

「・・・違う・・・ちがうちがうちがうっ!」

「どっちが『違う』のかしら?
 翔ちゃんを好きだってこと?それとも翔ちゃんを利用しようとしたこと?」

「あ・・・ぅぅ・・・ちがうのぉ・・・ちが・・・っ・・ぅ・・」

「何が違うって言うのよ!
 挙句の果てに私に嫉妬して逆恨みでしょ?
 そんなことの為に私はあんな目に遭わされるし・・・馬鹿馬鹿しくて笑っちゃうわよっ!!アッハハハハハ!」

一気に高潮した美千留は口早に捲くし立て、そして本条さんの体に巻きつけていた触手に力を加えた。

ビュルッ、ビュルルル・・ズズズ・・ズ

「あっ!はぁっ!あ・あ・あぁぁぁぁー!!」

本条さんの股間に刺さっていた触手が急に体積を増し、激しく律動を始める。
同時に首に巻きついていた触手がキュッと一瞬締まる。

「はぐっ」

今まで弛緩していた彼女四肢がビクンと跳ねる。
それと同時に彼女のスカートの股間の辺りに黒い染みが広がっていった。

本条さんの体はビクビクと痙攣を始め、腰は宙に浮いたままガクガクと振るえ続ける。
顔は見る見る赤紫色に変色し口の端からブッブッと泡だった唾を飛ばしている。

そうして30秒程後・・・彼女は急に動かなくなった。

「はーい、醜い死骸はお友達のところで仲良くしましょうねぇ〜」

そう言うと美千留は本条さんさんの体を先程の山田と同じく触手で摘まんでポイと、まるでゴミでも捨てるかの様に放り投げた。

狙ったのか偶然なのか、本条さんの体は山田の上に折り重なる様に落ちた。

「げぅっ」

一瞬本条さんが呻いた様な気がしたのだが・・・まだ息があるのだろうか?
しかし彼女の体はそれっきりピクリとも動かなかった。

・・・・・・・・・

とうとう残ったのは俺1人。

美千留は長く綺麗な髪をなびかせて振り返った。
大きな瞳が俺を見据えている。
そして口元が僅かに笑みに歪んだ。

「ゴメンね、翔ちゃん退屈だったでしょう?
 でも邪魔者は皆片付けたから・・・これから美千留とイーパイ、遊ぼうね♪」



→To be continued


あとがき
やっと「それっぽく」なってきました(笑)
次回もこの調子で「触手少女・美千留」が大暴れの予定。
おたのしみに〜♪